「消えるドアハンドル」は進化か、退化か?――15人の犠牲者が問い直す安全の定義とは

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外板と一体化する格納式ドアハンドルがEVで急拡大する一方、事故時に開かないリスクが浮上した。中国は2026年2月に規制を強化、市場は2035年に793億ドル規模へ――効率と安全のせめぎ合いを追う。

安全・機能両立フラッシュドアハンドル成長期待

新型リーフのフラッシュドアハンドル(画像:日産自動車)
新型リーフのフラッシュドアハンドル(画像:日産自動車)

 まだ論点が解消されたわけではないが、外見の美しさや空気の流れを優先するあまり、安全が後回しにされているわけでもない。ユーシンは、衝突時の衝撃で扉が不用意に開くのを防ぐ仕組みを備えつつ、取手を自動と手動の両方でせり出せるようにしてきた。

 日産自動車も、通電しない場面を想定し、取手を指で押し込んで引き出すことで開閉できる構造を用意している。電子制御が高度化するほど、こうした物理的な逃げ道を残す姿勢が重要になる。

 ビジネス・リサーチ・インサイツの報告書では、この部品の市場規模を2026年時点で24億7000万ドルと見積もっている。2026年から2035年にかけた年平均成長率は47.03%に達し、2035年には793億1000万ドル(約12兆4400億円)まで広がる見通しだ。

 一方で、高い技術力と精密な製造工程が求められるため、コストの高さが普及の足かせになっている現実もある。今後は、厳格化する規制に対応しながら、量産による価格低下を実現できる供給元だけが、市場拡大の恩恵を受ける構図になりそうだ。

 燃費向上と電動化の流れは、エネルギーの使い方を見直す動きを加速させてきた。その結果、空気抵抗を減らす工夫はこれまで以上に重みを増し、外装の細かな部位にも改善が求められている。こうした事情を踏まえれば、この方式が今後も採用の幅を広げる可能性は小さくない。近未来的な見た目や洗練された使い勝手は確かに魅力だが、それが広く受け入れられるかどうかは、安全という条件を確実に満たせるかにかかっている。

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