「消えるドアハンドル」は進化か、退化か?――15人の犠牲者が問い直す安全の定義とは
外板と一体化する格納式ドアハンドルがEVで急拡大する一方、事故時に開かないリスクが浮上した。中国は2026年2月に規制を強化、市場は2035年に793億ドル規模へ――効率と安全のせめぎ合いを追う。
ドアハンドル平面化の背景

フラッシュドアハンドルが広がり始めた背景には、車体表面の凹凸を極力なくそうとする
「フラッシュサーフェイス」
志向の強まりがある。ドアハンドルはひとつひとつ見れば小さな部品にすぎないが、外から車を眺めたときの印象を左右する存在でもある。取手が引っ込み、扉の面が途切れなくつながれば、全体の造形が崩れにくい。結果として、上質さを演出しやすくなり、車種ごとの違いを際立たせる材料にもなってきた。
表面が平らになることは、見た目だけの話ではない。走行中に受ける空気の流れが整い、抵抗が減る。エネルギー消費を抑えられれば、燃費や電費の改善につながる。とりわけ航続距離が評価軸となる電気自動車では、この差は無視しにくい。わずかな改善の積み重ねによって、電池を大きくせずに距離を伸ばせるのであれば、車両全体の原価を抑えるうえでも意味がある。高速走行時の風切音が減り、車内の快適さが保たれる点も見逃せない。
電動化が進み、エンジン音が消えたことで、車内の騒音に対する目線は一段と厳しくなった。こうした流れのなかで、格納式ドアハンドルを扱うユーシンは、この分野を付加価値の高い主力と位置づけている。
日産自動車も、電動で動くアウトサイドドアハンドルについて、外観の一体感を高めるだけでなく、空気の流れを整える役割を担うものだと説明している。燃費基準への対応と商品力の底上げを同時に進める手段として、格納式が選ばれている事情がうかがえる。