「トヨタ陥落」は必然だったのか?――「BYD」がシンガポールで首位、日本車敗北の構造と背後にある“都市国家”の論理

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シンガポールで2025年、BYDが新車登録首位に浮上。EV比率は45%に達しHVを超過。政府主導の制度と都市インフラが市場を動かし、従来の日本メーカーの優位を揺るがす変化の実態。

充電不安を消し去る法規制

シンガポール(画像:Pexels)
シンガポール(画像:Pexels)

 充電インフラに関する法整備も急速に進んでいる。2023年下半期からは、新築マンションにおけるEV充電器設置の枠組みが見直され、全ての駐車区画に将来の完全電動化を前提とした1.3kVAの電力をスマート充電用に確保することが義務付けられた。

 この数値は市場に大きな衝撃を与えた。住宅という居住空間と車両を電力ネットワークで密接に結びつける内容であり、エネルギー管理の主導権が車両側から都市インフラ側に移ったことを示している。全ての車両がEVに置き換わる前提の下、外部システムとのデータ連携に消極的な車両は、都市インフラという大規模なプラットフォームから事実上排除される可能性がある。

 シンガポールは地理的条件からEV運用で圧倒的な優位を持つ。島国で移動距離が短く、全土に展開される約2.8万か所の充電網が整えば、航続距離への不安はほぼ消える。これまで日本メーカーが競争力としてきた「給油なしでの長距離走行」という性能は、この限られた土地では過剰であり、不要な装備品とさえ見なされるかもしれない。

 都市の仕組み自体がEVを前提に構築されるなか、航続距離を誇るHVは最適化された都市構造から外れた存在となりつつある。インフラ側が車両の性能限界を補完する体制が整った時点で、車両単体のハードウェア競争は、実質的な意味を失ったといえるだろう。

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