「トヨタ陥落」は必然だったのか?――「BYD」がシンガポールで首位、日本車敗北の構造と背後にある“都市国家”の論理
シンガポールで2025年、BYDが新車登録首位に浮上。EV比率は45%に達しHVを超過。政府主導の制度と都市インフラが市場を動かし、従来の日本メーカーの優位を揺るがす変化の実態。
国策が閉ざす「選択肢」

シンガポールでEVが急速に普及している背景には、明確な国家政策がある。政府は「グリーン・プラン2030」によって、電動車の導入を国策として位置づけた。2030年までに新規登録される乗用車やタクシーを、EVやHV、水素燃料車などに限る方針を示しており、内燃機関車は段階的に廃止されることが予定されている。
名目上は国民の健康や気候変動対策が掲げられるが、実態としてはEVへの集中を意図的に進める内容だ。公共充電施設の整備も同時に進められ、2030年には約2万8000か所にまで拡大する計画である。
制度の面では、補助金や税制を通じた市場の誘導も行われる。2025年を境にHV向けの補助金は終了し、EV早期採用インセンティブ(EEAI)が導入された。購入時の追加登録料の45%が払い戻される仕組みは、消費者の選択に直接影響した。また、EVや一部HVへの道路税軽減も進む一方で、政府は自らEVを導入する姿勢を示し、ガソリン車やHVには排出ガス課徴金を課す構えだ。
2026年以降はHVを補助対象から外し、排出ガスの多い車両への課徴金を引き上げる方針が明らかにされている。内燃機関の利用は一段と抑制され、市場に残された選択肢は事実上EVだけとなる。
この動きは、日本メーカーが重視してきた技術の多様性を根底から揺るがす。ハイブリッドを含む既存技術は、制度の変更によって市場での立ち位置を失い、従来の価値基準は通用しなくなった。政府主導の制度が消費行動を強く規定するなか、国内メーカーは従来の戦略を見直さざるをえない状況に追い込まれているのだ。