「EV革命」に惑わされるな――年間の新車販売わずか「5%」、路上を占拠する“膨大なストック”が変化を阻む
路上に残る8000万台の車両が、未来の電動化を制約する。新車販売のわずか5%でしか更新されない現実が、自動車産業の変革速度を決める。
線としての技術、面としての社会

自動車の未来をめぐる議論は、どうしても「電気自動車(EV)か、エンジン車か」「自動運転は実現するか」といった技術中心の話題に偏りがちだ。だが、産業の構造を決めているのは、個々の技術の優劣ではない。むしろ注目すべきは、社会全体に広がる膨大な車両の蓄積である。世界規模で十数億台にも上る保有車両が、そこにある。
こうした蓄積は、「古い車を置いている」という意味にとどまらない。新しい技術や製品が市場に浸透する速度を制限し、経済的な合理性のもとでしか入れ替わらないという現実の枠組みを作り出している。社会における変化は線的ではなく、こうした
「面」
の広がりの上で進む。個々の技術進歩がいくら早くとも、物理的な在庫が残る限り、その影響は段階的であり、時間の遅れが必ず生じる。
この時間差こそが産業全体の変化を制約する条件になっている。EV周辺の華々しい“革命”という表現の背後には、こうした現実が隠れている。積みあがった車両が入れ替わるプロセスそのものが、変化の速度を決める。
規模の大きさが産業の自由度を縛るのだ。現実を直視せずに未来像だけを描いても、必ず現実との乖離にぶつかることになる。