「EV革命」に惑わされるな――年間の新車販売わずか「5%」、路上を占拠する“膨大なストック”が変化を阻む

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路上に残る8000万台の車両が、未来の電動化を制約する。新車販売のわずか5%でしか更新されない現実が、自動車産業の変革速度を決める。

消費者の残価信頼

トヨタのソフトウェアづくりのプラットフォーム「Arene」(画像:トヨタ自動車)
トヨタのソフトウェアづくりのプラットフォーム「Arene」(画像:トヨタ自動車)

 消費者が電動化に対して慎重な態度を示すのは、新しい技術への不信からだけではない。むしろ、自動車を資産として捉えた場合、

「数年後の売却価格」

をどう確保するかという考え方が根底にある。こうした心理は、経済的に見れば自然な判断だといえる。

 自動車の価値を資産として認識するとき、購入者の関心はソフトウェアのアップデートによる将来的な機能向上よりも、下取り価格や残価設定に強く左右される。つまり中古車市場での換金性だ。ソフトウェア定義型車両(SDV)が提供するアップデートの価値が市場で客観的に評価されない限り、消費者は信頼性が確認された既存技術を選び続ける傾向がある。

 こうした合理的な判断は、市場全体の更新を鈍らせ、電動化の進展を遅らせる。結果としてメーカーは、内燃機関車からEVまで幅広く取り揃える必要に迫られ、多様な選択肢を提供する「マルチパスウェイ戦略」を維持せざるを得ない。消費者の資産価値を重視した行動が、知らず知らずのうちに既存技術の寿命延長に寄与している現実に、注意を向ける必要があるのだ。

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