「部下を守らない課長」「下請けを簡単に切り捨てる部長」上司を“覚悟の有無”で断罪しても全く意味がない理由【連載】上司ガチャという虚構(6)

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職場の約6割の管理職が「業務過多」を強いストレス要因に挙げるなか、部下を守らない上司は単に覚悟不足ではなく、責任と裁量のアンバランスや評価制度の偏りといった組織の構造が生んでいる。

覚悟なき上司レッテルの拡散理由

上司のイメージ(画像:写真AC)
上司のイメージ(画像:写真AC)

 最近、若い世代の間でよく聞く「上司ガチャ」という言葉。どんな上司に当たるかは運任せで、自分では選べない――そんなもどかしさを端的に表している。しかし、そもそも上司を変える力はほとんどの人にない。だから「当たり・ハズレ」にこだわっても意味はなく、不満を運のせいにしていては自分の成長の機会を逃してしまう。本連載「上司ガチャという虚構」では、上司を「良い・悪い」で単純に裁くのではなく、無駄な労力に振り回されず、自分の成長や適応力に目を向ける視点を探る。変化の激しい職場で、自分の市場価値をどう磨き、キャリアをどう守るか。そのヒントを丁寧にひも解いていく。

※ ※ ※

 職場で問題が起きると、その矛先は上司に向かいがちだ。

「ピンチのときに部下を守らない課長は覚悟が足りない」
「長年付き合った下請けを簡単に切る部長は冷酷だ」

といった評価がしばしば下される。しかし人が変わっても同じ状況に置かれれば、同じ選択が繰り返されるだけだ。問題の多くは上司個人の“覚悟”ではなく、そうせざるを得ない組織のインセンティブや制約にあるからだ。

 物事の原因を個人の資質に求めるのは、最も説明が簡単だからである。「制度や評価体系、権限の所在がこうなっている」と複雑な構造を説明するより、「あの人がダメだ」と断じるほうが手早い。

 また、個人批判は感情のはけ口にもなる。理不尽な目に遭うと、人は目に見える「顔」に怒りをぶつけたくなる。しかし特定の個人を責めても、対策は「良い上司を配属する」「研修で意識を変える」といった精神論に終わり、組織構造自体は変わらない。「腹をくくるかどうか」は個人の問題として片付けられるが、

「腹をくくらせない状況」

はそのまま放置されるのだ。

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