「インバウンドの迷惑行為」77%の正体――駅・電車で彼らの“悪意なき行動”が嫌われる理由とは? マナー違反で片づけてはいけない
インバウンドの増加が、静かに日本の鉄道秩序を揺らしている。民鉄協調査では77.1%が「迷惑行為を経験」と回答。問題はマナーではなく設計だ。行動経済学の視点から、移動空間の再設計という現実解を探る。
問題は「設備」ではなく「振る舞い」

これらの項目を見渡すと、設備の不足や制度上の欠陥が原因ではないことがわかる。大半は車内での
「振る舞い」
に関わる内容だ。ただし「マナー意識が低い」で片づけてしまえば、状況の本質を見誤ることになる。
日本の鉄道は、秒単位の定時運行と高密度なダイヤを前提に、長い時間をかけて磨かれてきた。乗り降りの動作から車内での立ち位置まで、
「暗黙の了解」
として共有される行動様式がある。それらの積み重ねによって、大量輸送が破綻せずに機能してきた。つまり日本の鉄道は、利用者の行動がある程度予測可能であることを前提に動いているのだ。
インバウンドの行動は、この前提から外れやすい。大声での会話や通路をふさぐ荷物の置き方には悪意がなくても、流れを乱す要因となる。車内全体の動きが鈍り、次の停車駅での乗降にも支障が出る。利用者が感じる不快感は、音や匂いそのものだけに起因するわけではない。移動時間や混雑の見通しが崩れることへの違和感が、深い部分で作用している。
本来なら、表示や案内、誘導の工夫で軽減できそうな課題だ。それでも同様の摩擦が繰り返し指摘されるのはなぜか――注意喚起やルール提示だけでは行動が変わりにくい、人の心理的な特性が絡んでいるのだろう。