「日本車クオリティ」は逆に負の遺産なのか?――13年耐える“高品質信仰”が阻むデジタル刷新のジレンマ、中国車・世界販売首位で考える
未完成のまま投入する開発手法

中国の電動化における実装速度は圧倒的であり、新技術の投入から量産まで1年を切る事例も珍しくない。市場に未完成な部分を残したまま投入し、走行データを収集しながら無線更新(OTA)で修正を繰り返す手法は、世界中のユーザーを事実上のデバッグ要員として活用する開発モデルを構築している。
これに対し、日本は安全検証や法規対応に数年を費やす慎重な姿勢を崩しておらず、2025年末時点の乗用車に占めるEV比率は約1.6%に留まっている。この技術成熟を待つ姿勢は、経済的には膨大な機会損失を招き、収集される走行データの量においても中国との間に指数関数的な格差を生んでいる。
サプライチェーンの面でも、自国内完結率の高い中国は地政学的リスクに対して強靭な持久力を誇るが、多国分散型を採用する日本は外乱に弱く、地政学的変動がそのまま供給停止に直結する脆弱性を抱えている。
中国では完成車とバッテリーを同期させて現地展開する戦略が徹底されている。車載バッテリー市場の大半を占めるCATLなどの自国メーカーと連携することで、現地での雇用創出と産業基盤の構築を同時に進め、政治的な受容性を強引に獲得している。対して日本は、主要な部材を外部に依存したまま現地生産を行うため、雇用を通じた政治的影響力は限定的である。
車体コストの大部分を占めるバッテリーの供給権を中国が握っている以上、日本メーカーが車を販売するたびに、利益の一部が中国のサプライチェーンへと還流する逆構造が定着した。中国車の価格帯が16万元(約350万円)程度まで下落するなかで、日本車は中価格帯にラインナップが集中し、低価格帯での競争を放棄している。
初めて自動車を購入する新興国の消費者が安価なモデルを選択する現状において、この価格帯の空洞化は将来的なブランド乗り換えの芽を摘み、日本車の市場占有率を根底から切り崩す要因となっているのだ。