「日本車クオリティ」は逆に負の遺産なのか?――13年耐える“高品質信仰”が阻むデジタル刷新のジレンマ、中国車・世界販売首位で考える
新興国で進む中国主導の電力網

新興国市場において、中国車はその圧倒的な価格競争力で現地の需要を独占しつつある。これは車両の販売に留まらず、
・太陽光発電
・蓄電池
・送電インフラ
を含めたエネルギー構造の転換をパッケージとして提案する国家戦略と連動している。石油依存からの脱却を狙う新興国にとって、中国車を選択することは、
「中国主導の次世代電力網への帰順」
を意味する。
これに対し、日本車は北米や欧州などの成熟市場に依存し、中東やアフリカでは高品質な中古車需要に支えられてきた。しかし、安価な中国製新車が大量に流入することで、日本車が築いてきた中古車流通によるブランド循環は崩壊の危機にある。
タイにおける日本車のシェアが過去5年で9割から7割へ低下した事実は、信頼性という旧来の価値基準が、
「最新の機能と低価格を両立する合理性」
に上書きされた結果である。欧州でも中国車のシェアは約7%まで拡大し、ハンガリーやトルコでの現地生産開始は、域内での供給網の不可逆的な変化を象徴している。
中国車はインフォテインメント装備を拡充し、大画面ディスプレイやスマートフォンとの高度な連携による体験価値を最優先している。消費者の認知が
「車は大型のモバイルデバイスである」
という方向にシフトした結果、日本車が得意とする走行安定性や精緻な機械構造は、平均的なユーザーにとって知覚しにくい過剰な品質へと追いやられた。
日本国内での平均使用年数は約13年に達し、長期使用を前提とした堅牢な設計が日本車の評価を支えてきたが、デジタル化の速度が加速する現在、10年以上変わらないハードウェアを使い続けることは、ソフトウェアの鮮度という観点からは価値の棄損を意味する。ユーザーが数年単位での買い替えを前提とするようになれば、耐久性を重視する姿勢は、コストを不必要に押し上げる負の遺産となる。
日本メーカーはソフトウェア定義車両(SDV)による巻き返しを急ぐが、ハードウェアを情報の器と見なす発想への転換が遅れれば、消費者の関心を繋ぎ止めることは困難である。