「法律じゃないけど当たり前」 渋滞末尾のハザード、プロの“無言の掟”が日本の道路を守ったのか?
高速道路の死亡事故の約1割を占める追突。渋滞末尾でのハザード点灯は法律義務ではないが、2018年東名・新東名での多重事故を契機に広がり、物流や社会損失を防ぐ現場発の安全文化として定着している。
10日間で2件の死亡事故という転機

2018年3月、静岡県内の東名高速道路および新東名高速道路では、わずか10日間のうちに2件の死亡事故が相次いで発生した。1件目は大型トラックが渋滞車列に追突して乗用車を巻き込み、2件目も渋滞の最後尾に大型トラックが追突する多重事故だった。10日の事故は、最高速度を110km/hに引き上げた試行区間で起きた初の死亡事故でもあった。
この事態を重く見た静岡県警高速道路交通警察隊とNEXCO中日本、そして静岡県トラック協会は緊急対策会議を開催し、渋滞最後尾でのハザードランプ点灯を広く呼びかけることを決定した。物流の動脈である高速道路において、大型車両が絡む事故は荷役の停滞や供給網の寸断に直結する。そのため、道路管理者と運送業界が一体となって、道路の安全性を維持するための対策を急いだのだ。
ハザードランプの点灯は、前方の渋滞や減速状況を後続車にいち早く知らせる「防衛運転」であり、運転者同士が注意を喚起し合うことで安全を確保する有効な手段として位置づけられた。
行政や団体が厳格な罰則を設けるのではなく、現場の実態に即した推奨行動を周知したことで、ドライバーの自律的な意識変革が促された。高速道路では車両が速い速度で走行しているため、渋滞末尾の発見が遅れると急ハンドルや急ブレーキを招き、それが後続車へと連鎖して大規模な事故に発展する恐れがある。こうした事態を防ぐための情報共有を、現場の知恵から組織的な活動へと昇華させたことが、現在の広がりを支えている。