物流危機「真の本番」はこれから? コンビニ欠品、配送料高騰、置き配強制――ついに剥がされる「過剰サービス」の仮面

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働き方改革でトラック輸送能力は2024年度に14%不足すると警告された「物流の2024年問題」。だが実際の物流は需要減と効率化で沈静化。しかし置き配や配送回数削減で、消費者も徐々に痛みを感じ始めている。

表面化していないふたつの理由

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 では、なぜ「2024年問題」は表面化していないのか。筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は、大きくふたつの理由があると考えている。

 第一の要因は、「貨物輸送量自体が減少したこと」である。「2024年問題」の統計的根拠となった「2024年度中に約14%の輸送能力が不足する」という試算は、2019年度の国内貨物輸送実績を基にしたものであった。しかし、実際には2019年度の輸送実績(営業用トラック:約28.1億t)に対し、現在の貨物輸送量は約25.1億tと、約3億t、約11%も減っている。

 この需要の落ち込みが、予測された輸送能力不足(約4億t、14%相当)の大部分を相殺した。加えて、

・共同輸送
・中継輸送
・輸送リードタイムの見直し

といった効率改善が功を奏した。結果として懸念された「モノが運べなくなる」という深刻な物流クライシスは、見かけ上回避された。

 第二の要因は、これまでトラック輸送で行われていた「過剰サービスが減ったこと」である。多くの企業は、その変化に痛みをほとんど感じていないか、あるいは受け入れている。次のセクションで具体例を三つ挙げよう。

三つの具体例

「2024年問題」が大事にならなかった理由。
「2024年問題」が大事にならなかった理由。

 具体例は

・商慣習の見直し(1/3ルール、1/2ルールの廃止)
・コンビニ各社における配送回数削減
・ECサイトの配送リードタイムと配送料

の三つである。順に見ていこう。

 食品業界には、製造日から賞味期限までの1/3ないし1/2の期間内に、小売店へ納品するという商慣習があった。この1/3ルール、1/2ルールは、2023年6月に発表された「物流革新に向けた政策パッケージ」で廃止が指示された。

 結果として、スーパーの店頭には、これまでよりも賞味期限の短い商品が並ぶことになったはずだ。しかし、消費者の反応はほとんど見られなかった。筆者自身の体験では、パンや納豆などで「賞味期限が短い」と感じることが多かった。セミナーやメディア出演時に話題にすると、「そういわれてみれば確かに」と反応する人もいたが、大多数は気づいていなかったようだ。

 コンビニ各社では、配送回数の削減が進んでいる。ローソンは2023年12月から、弁当やおにぎり、デザートなどのチルド・定温商品の配送を、原則1日3回から2回に減らした。セブンイレブンも同様の取り組みを発表している。ファミリーマートではAIを活用した配送シミュレーターで、配送頻度の見直しや物量の平準化に取り組んでいる。

 この結果、以前と比べて夕方や深夜帯の棚に欠品が目立つようになった。特に、おにぎり、サンドイッチ、弁当などの棚は、この時間帯に空きが目立つ。

 ECサイトでも、配送の変化が見られる。これまで標準だった翌日配送を翌々日以降に変更したり、配送料を有料化・値上げする動きが見られる。Amazonは2024年3月から、非プライム会員の通常配送無料基準を2000円から3500円に引き上げた。ニトリは土日祝日配送や時間枠指定配送に1100円の追加料金を設定している。

 ユニクロやGUでは、ECカート画面に「指定住所への配送(送料500円、4990円未満の場合)」と「店舗受取(送料無料)」を併記し、店舗受取のメリットを示して消費者を誘導している。

 多くの人々は、いつどんな時間にお店に行っても商品が豊富に並んでいる状況の不自然さを、意識の有無にかかわらず受け入れ始めているようだ。

 そもそも、これまでの生活は過剰に便利すぎたのである。物流、とくにトラック輸送がサービスの水準を現実的なレベルに修正したとしても、消費者は抵抗なく受け入れている。

「2024年問題」への対応として、過剰サービスを減らすことで輸送サービスの維持を図った取り組みも、ほとんど意識されることなく世間に受け入れられた。

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