日本はなぜ「左側通行」なのか? “左”は世界でわずか3割――走行方向に刻まれた国家制度とインフラ選択の痕跡とは
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米国右側通行の起源

米国は元々英国の植民地だったが、独立戦争を経てフランスの影響を受けたとする説がある。とはいえ、入植時代から右側通行が一般的だった。馬車や牛馬は右側を通り、それを統制する人は道の中央に位置した。大半の人の利き手である右手で馬車を操り、不審者には右手で応戦できる体勢をとっていた。
右利きの場合、左側に向きながら銃を扱うほうが自然であり、荒野で護身のために右側通行が定着したのは納得できる。必ずしも全国で統一されていたわけではないが、19世紀後半には法的に右側通行が定められた。
この慣習を受け、大衆車T型フォードは左ハンドルを採用した。これにより米国での右側走行は揺るがないものとなった。
自動車のハンドル位置は、その国の走行側と密接に関係している。左側通行の国では右ハンドル車が、右側通行の国では左ハンドル車が一般的だ。対向車線の視認性が高く、追い越し時の安全性が確保しやすいことが理由である。車の走行方向が異なる英国とフランスは英仏トンネルでつながっているが、トンネル内は列車に載せられて移動している。
まれに、自動車の走行方向を変更した国もある。スウェーデンはもともと左側通行だったが、周辺諸国との違いによる混乱を避けるため、1967年に右側通行へ変更した。車両輸入や国境交通の安全性向上が理由である。サモアも2009年に左側通行に移行した。日本やオーストラリア、ニュージーランドなど左側通行国からの車両輸入との整合性が背景にあった。
日本では、沖縄が返還された際に走行方向が右側通行から左側通行になった。現在、在日米軍基地内は日本と同じ左側通行だが、誤って公道を逆走する事故が発生したことがある。国ごとに走行方向が統一されているとはいえ、人が国境を越えて移動する以上、身近な所でも混乱がないわけではない。