日本はなぜ「左側通行」なのか? “左”は世界でわずか3割――走行方向に刻まれた国家制度とインフラ選択の痕跡とは

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世界の道路の約7割が右側通行で、国によって走行方向は異なる。歴史や文化、武器や鉄道、産業の慣習が背景にあり、スウェーデンやサモアの事例は大規模変更も可能であることを示す。

ローマ・中世における慣習の定着

英国の影響と左側通行イメージ。
英国の影響と左側通行イメージ。

 では、英国ではどのような経緯で左側通行が定着したのだろうか。剣を持つ右手を自由に保つ必要があったことが一因とされる。理由は微妙に異なるが、武器を扱うという点では日本と共通している。

 この習慣は古代ローマ帝国の一部地域にも存在したが、全領土で一律に適用されていたわけではなかった。馬車の利用が増えるにつれて、通行側の慣習は地域ごとに定着していった。中世になると、教皇が「巡礼者は左側通行すべき」と定め、これが欧州で広く受け入れられるようになった。

 しかし、現在の欧州で左側通行を採用している国は英国などごく一部に限られる。大陸側では右側通行が主流だ。伝統的に左側通行だった国々は、なぜ右側に切り替えたのか。

 フランスではもともと馬車は左側、歩行者は右側を通行していた。交通を合理化するとともに、馬車に乗る富裕層と平民の間の階級意識をなくす狙いもあり、右側通行に統一された。ナポレオン・ボナパルトはフランスを国民国家へと変革する過程で、征服したドイツ、イタリア、スペインなどでも右側通行を導入した。しかし、海を隔てた英国にはその影響は及ばなかった。

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