「ポルシェの跡地にBYD」 かつての日本車天国「香港」で何が起きているのか? EV比率71%、中国車軽視が招く戦略的敗北

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2025年、BYDがEV新車販売で225万台を突破し世界1位に躍進。香港ではEVが新車の7割を占め、中国メーカーが急速に存在感を増す。日本市場にも影響が及ぶ可能性を示す変化の実態を、最新統計と現地ルポから検証する。

香港市場の変容

BYDのショールーム。香港の風景。11月中旬撮影(画像:武田信晃)
BYDのショールーム。香港の風景。11月中旬撮影(画像:武田信晃)

 中国の電気自動車(EV)最大手、比亜迪(BYD)は2026年1月1日、2025年のEV新車販売台数が前年比28%増の225万6714台になったと発表した。米テスラを抜き、世界1位に躍り出た。香港ではこれまで日本車の存在感が非常に大きかった。ところが近年、中国メーカーが徐々に浸透し、特にBYDの勢いが目立つ。香港の市場変化は、中国の自動車メーカーが海外でシェアを拡大する際の先行例として、今後の日本メーカーにとっても参考になるだろう。

 筆者(武田信晃、ジャーナリスト)は2025年11月中旬、香港を訪れたが、街の景色は一変していた。かつて市場を支配していた日本車の姿は影を潜め、主役の座をEVが占めるようになっている。背景には、香港政府が打ち出した、2035年までに内燃機関(ICE)車の新車登録を禁止するという政策がある。

 テスラの普及も目覚ましいが、それ以上に際立つのはBYDを中心とした中国メーカーの台頭だ。Zeekr(ジーカー)やMaxus(マクサス)といった、日本ではまだ馴染みの薄いブランドも、現地では確実に市民権を得ている。自動車ディーラーが並ぶ通りでは、BYDのショールームが最も大きく構えられ、存在感を誇示していた。

 日本市場でもBYDは攻勢を強めているが、香港の現状を見ると戦略の本質が浮かび上がる。特定地域に狙いを定め、インフラやブランド認知を「面」でじわじわ浸透させる手法だ。では、実際にどれほど市場が塗り替えられているのか。次に、最新の統計データでその勢いを確認しよう。

EVが新車販売のトップ2を占める香港

トヨタ。香港の風景。11月中旬撮影(画像:武田信晃)
トヨタ。香港の風景。11月中旬撮影(画像:武田信晃)

 香港政府運輸署が発表した2024年通年の新車登記台数は、前年比5.75%増の4万6709台だった。うちEVは3万3206台で、全体の約71%を占めている。

 メーカー別では、1位がテスラの9556台、2位がBYDの5819台、3位がBMWの3622台だった。5位にはトヨタが2886台で前年同月比6.3%増、6位には上海汽車集団傘下のMaxusが2055台で前年同月比124.1%増を記録している。2025年の通年データが出れば、BYDがトップに立つ可能性も十分にある。

 2024年12月単月では、テスラが710台でトップだった。だが10年前の2014年12月は、トヨタが1001台を販売し、テスラを上回っていた。かつてはICE車とEVの両方で強みを持つトヨタが市場をリードしていたことがわかる。

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