残クレは「見栄のドーピング」なのか? 年収460万で高級車に乗る現実――あなたは車の主人か管理人か

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街で目にする高級車の価格は540~890万円。平均年収458万円との乖離を埋める残価設定型クレジットは、新車購入の約半数で利用され、所有から使用への価値観変化と、安全・体験を両立する合理的消費の象徴となっている。

問われる主体性

 最終的に問われるのは、車を通じて何を手に入れようとしているのか、という問いだ。

 快適な移動時間、家族との思い出、あるいは仕事上の信用。それらを得るために、残クレという金融システムを道具として徹底的に利用し尽くすのであれば、それは極めて現代的な合理主義の勝利といえるだろう。契約終了後の柔軟な選択肢をリスク管理として使いこなす姿勢は、賢明な消費者の姿だ。

 しかし一方で、返却期限や周囲の視線に自らの行動を縛られ、心の中で常に査定額を計算しながらハンドルを握るなら、それは豊かさから最も遠い場所にいる。

 結局のところ、2020年代において最も希少な価値とは、アルファードに乗っていることでも、現金一括で買うことでもない。残価設定というシステムの利点と欠点の両方を完全に理解した上で、その選択を自らの足で引き受け、自由を損なわずに乗りこなす主体性にこそ宿る。

 残クレ高級車は、私たちの欲望と経済、合理性と制約を同時に映し出す大きな鏡だ。その鏡に映っているのは、誇らしげな所有者か、それとも制度に追い立てられる使用者か。それ自体が、利用者自身の人生観と真の自立を浮き彫りにする指標となっているのだ。

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