年賀状を「返さない人」7割超──それでも6割が喜ぶ、日本人の矛盾！ 「LINEで十分」の裏に残る罪悪感とは
年賀状をもらっても返事を出さない「年賀状スルー」は71.5%に達した。一方、68.0%は「もらうと嬉しい」と回答。効率化が進む社会で、手間をかける行為の価値と人間関係の“非効率”が改めて浮かび上がる。
非効率を必要とする進行形
私たちは今、年賀状を
・伝統として守るか
・不要なものとして捨てるか
という、極端なふたつの考え方の間に立っている。すでに多くの人は、ふだんの連絡は速いデジタルツールを使い、年に一度の挨拶だけを紙で行っている。これは、速さの違う道具を上手に組み合わせた、賢い関係の作り方だ。
すべてを速くするのではなく、大切な場面ではあえて時間をかける。これは非常に合理的な判断といえる。速い情報の道と、ゆったりした心の散歩道を使い分けているのだ。
移動や運送の世界でも、すべてを自動にして速くすることだけが正解ではない。あえて人手や時間をかけ、物としてのやり取りを残すことが、サービスの体験価値を根底から支える場面がある。
例えば、新幹線と歩くことを組み合わせて豊かな街ができるように、人との交流も速さの違う方法を混ぜる必要がある。ポストに届くハガキは、手間をかけること自体が価値に変わる、現代では数少ない行為として生き残っている。
年賀状を出さない人が7割をこえたことは、文化が終わることを意味しない。人間がどこまで便利さを求め、そしてどこから先で「手間」という名の非効率を必要とするのかを確かめる、現在進行形の実験結果なのだろう。