EV幻想崩壊? 「77%がエンジン車回帰」――なぜEVは選ばれないのか? 自動車業界調査が示す経営・消費者の顕著なギャップとは
KPMGの最新調査は、経営層775人と国内消費者6007人の意識の断層を浮き彫りにした。74%が供給網を見直し、86%が先端技術に投資する一方、消費者はエンジン車へ回帰する。制度・技術・市場が同時に摩耗する中、自動車産業は再加速の起点を探っている。
技術位置づけの変化

本調査が示したもうひとつの重要な変化は、
「技術に対する捉え方そのものが転換点に差しかかっている」
点だ。とりわけソフトウェア定義車両(SDV)を巡っては、完全自動運転の実現を最終目標とする見方から、車両全体の価値を底上げするための基盤技術へと位置づけが変わりつつある。
安全性の向上や保険の高度化、保守・整備の効率化、ユーザー体験の改善といった領域では、すでにソフトウェアの影響力が拡大している。こうした用途では、フル自動化を前提としなくても価値を生み出せるため、導入のハードルは相対的に低い。生活の延長線上で機能する技術として受け入れやすい点も、日本の消費者意識と重なる。
制度との関係も変化している。自動運転の導入を一律に広げるのではなく、公共交通や準公共用途に絞って展開する発想が現実味を帯びてきた。高齢者の移動支援や過疎地交通といった分野では、社会的な必要性が明確であり、技術導入への理解も得やすい。用途を限定することで、かえって技術の活用範囲が広がる構図が生まれている。
企業の取り組みを見ても、方向性は一致しつつある。HVを収益の基盤としながら、車両のソフトウェア化を段階的に進める動きが目立ち始めた。顧客との関係も、購入時点で完結するものから、利用や更新を通じて継続する形へと変わってきている。技術は目新しさを競う対象ではなく、信頼を積み重ねるための手段として扱われ始めている。
この位置づけの変化は、開発の優先順位にも影響を及ぼす。何を実装し、何を先送りするのか。その判断軸は、技術的な可能性ではなく、社会との接点の持ち方に移りつつあるのだ。