EV普及の裏で何が起きているのか? 豪州鉱山を揺るがすSNS採用――EVサプライチェーン不安定化の深層とは

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EV普及の裏で、資源供給の最前線が揺れている。豪州では年収1700万円超でも人手不足が解消せず、SNS経由の即席採用が拡大。再生数1億回超の「#Fifo」バズが、鉱山労働とEVサプライチェーンに新たな不安定性をもたらしている。

ワーホリ流入が招く鉱山労働の空洞化

 オブザーバー紙が指摘したように、TikTok上では「高賃金」「週の半分が休み」といった要素だけが切り取られて拡散された。実際の現場は、気温が50度近くに達する環境で、12時間労働が常態化している。労働者の約8割は男性だ。女性労働者の74%がセクシャルハラスメントを経験したと推定されている。現実の労働条件は十分に伝えられないまま、魅力的な情報だけが流通した。

 賃金の伸び悩みと生活費の上昇を背景に、英国や一部EU諸国の若年層はオーストラリアに活路を求めた。対象となったのがワーキングホリデービザである。二国間協定に基づき、一定期間の滞在と就労が認められる制度だ。海外で学び、働き、生活する経験ができる点が支持を集めた。2024年6月までの12か月間に、鉱業分野で承認された2回目の申請件数は前年の約3倍に増えた。

 ただし、多くの応募者は必要な資格や許認可を満たしていなかった。その結果、現場では低熟練人材の短期的な入れ替えが常態化した。生産性の向上よりも、離職と再補充に伴うコストが膨らんだ。

 期待と現実の乖離が大きいほど離職は加速する。補充を前提とした雇用が連鎖し、労働の不安定化が進んだ。最終的には、EVサプライチェーン全体の安定性を損なう要因となっている。

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