EV普及の裏で何が起きているのか? 豪州鉱山を揺るがすSNS採用――EVサプライチェーン不安定化の深層とは

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EV普及の裏で、資源供給の最前線が揺れている。豪州では年収1700万円超でも人手不足が解消せず、SNS経由の即席採用が拡大。再生数1億回超の「#Fifo」バズが、鉱山労働とEVサプライチェーンに新たな不安定性をもたらしている。

「#Fifo」バズに映る若年層の賃金圧力

TikTok利用イメージ(画像:Pexels)
TikTok利用イメージ(画像:Pexels)

 TikTokをはじめとするSNSでは、検索履歴や視聴行動、反応傾向をもとに情報を自動表示するアルゴリズムが稼働している。この仕組みが若年層の就労期待を押し上げ、採掘企業にとっては採用難を補う外部の集客装置として機能し始めた。

 オブザーバー紙によると、TikTokで「#Fifo」と検索すると8万件を超える投稿が表示される。上位約500件はアルゴリズムによって優先表示され、累計の再生回数は1億4800万回以上に達した。その多くは2022年以降に投稿されたものだという。TikTokのCreative Centreのデータでは、英国における「#Fifo」の検索数は直近2年間で10倍に増えた。視聴者の約6割は18~24歳が占める。

 このバズの背景には、欧州における賃金停滞がある。英国では主要大学卒の初任給が2021年時点で3万ポンド前後にとどまり、過去7年間ほぼ横ばいで推移した。生活コストの上昇が続くなか、若年層の間で国外就労への関心が高まった。そこに採掘企業側の情報拡散ニーズが重なり、SNS上での急速な広がりを招いた。

 結果として、採掘企業は採用の一部をプラットフォームのアルゴリズムに委ねる構造へと踏み込んだ。制度や安全面のリスクを抱えたまま、情報の質や信頼性の管理は後景に退いた。労働市場の入口が、企業の統制を離れつつある現実が浮き彫りになっているのだ。

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