「EV優遇」はどこまで許されるのか? 28年新税「最大年2.4万円」、日本のEV政策を揺さぶる「公平性」の代償

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EVに燃料税は不要――その「優遇」が転換点を迎える。政府は2028年をめどにEVへの重量課税を検討し、年6500円から最大2万4000円の新負担案も浮上。普及促進と財源確保、ふたつの政策軸が衝突するEV新税の是非を追う。

筆者の意見

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 EV新税の議論には、いくつかの不満や問題意識が絡んでいる。ひとつは、ガソリン税を払わないEVとの間に生まれた不公平感。もうひとつは、EVの車体が重く、道路を痛めやすいという指摘だ。こうした声は、有権者やエンジン関連の業界団体から繰り返し出てきた。政治家にとって無視できない論点になっている。

 EV新税には、複数の狙いが重なっている。税収の安定確保、道路維持費の公平な分担、そしてカーボンニュートラルの推進。狙いが増えるほど、政策を形にするのは難しくなる。議論が複雑化しているのもそのせいだ。

 市民の受け止めは意外と冷静だ。筆者(近澤眞吉、モータージャーナリスト)がよく聞くのは、車両価格が高く、バッテリー交換にも不安があるため、家庭用としては選びにくいという声である。燃料費が抑えられ、部品点数が少ない分、維持費で有利になる可能性を説明しても、判断が変わらないケースは少なくない。

 結局、EVは市場の力だけでは普及してこなかった。だから政府は、各種の減税措置を通じて普及を後押ししてきた。EV新税をめぐる議論は、こうした政策の積み重ねを見直す局面に差しかかっていることを物語っている。

 そこにEV新税の議論が重なる。車検時に追加課税されるとなれば、消費者の初期費用への警戒感は一段と強まる。長引く景気低迷や物価上昇への不満を踏まえれば、EV新税への反発が強まる可能性は高い。結果として、

「EV普及の速度を落とす政策」

になりかねない。

 とりわけ、物価高が続くなかでEVの平均価格は上昇傾向にある。この状況で新たな負担を課せば、逆効果になりやすい。中国メーカーなどの努力で低価格EVも登場しているが、海外製を選びにくい消費者層が一定数いる点も見逃せない。

 道路財源の問題については、本来、利用実態に応じた課税へ切り替えるべきだとの指摘がある。デジタル技術の進展で、利用ベース課税の技術的なハードルは下がっている。車種別の税負担強化から手を付ければ、制度の疲労を温存するだけになりかねない。生活者の不満が積み上がる恐れもある。

 燃料税と重量税が並立する現行の二重構造も、見直しを避けて通れない論点だ。さらに国際競争力の観点では、日本企業のEV投資は、中国などと比べて10年以上の遅れがあるとされる。国家政策が一貫性を欠けば、メーカーの長期投資判断は一層慎重になる。カーボンニュートラルと産業政策の整合性が損なわれる可能性も高まる。

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