高市政権の決断――自賠責保険「5741億円返還」は本当に実現するのか? 30年放置の負債、保険料軽減どうなる
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自賠責保険特別会計から一般会計に流用された5741億円の一括返還が2025年度補正予算で検討される。約30年にわたり滞留した資金の返還は、交通事故被害者支援の充実と制度安定化、将来的な保険料抑制につながる可能性がある。
財務省裁量と政策不透明

問題点を三つの方向から整理する。
ひとつめは「長期未返還の影響」だ。長期にわたる未返還により、保険料負担の増加や被害者支援の不透明化、制度への信頼低下が生じた。5741億円が返還されない期間、ユーザーの保険料がどれだけ膨らんだかを示す具体的なデータは公表されていない。
国土交通省は現在、約1500億円を運用して被害者救済に充てているが、その運用益は年間約30億円にとどまる。本来なら約7500億円を運用できるはずであり、財務省から返済されないことで運用益は少額にとどまる。被害者支援を充実させるために国民に負担を強いる状況は好ましくない。政策への信頼も損なわれたままである。
ふたつめは「政策決定プロセスの不透明さ」だ。財務省の裁量で繰り入れが行われ、返済も滞ってきたことが問題である。政権交代ごとに対応に差はあったが、1996(平成8)年度から2003年度まで一部が返済された。その後も財政状況の厳しさから返済は中断した。2017年10月30日の産経新聞では、年に569億円から2000億円ずつ返済してきた時期もあると報じられたが、最終的には5741億円の残高が残った。
三つめは「将来の課題」だ。財政専門家の間では、返還後の財政安定や保険料引き下げの具体性は不明との見方が強い。被害者支援策の改善も必要である。重度後遺障がい者への支援としては、療護施設の拡充が求められる。
これまで脳損傷による重度後遺障がい者向けの施設は少なく、今後は脊髄損傷や高次脳機能障がいの人への支援も整備する必要がある。高齢者が障がいを抱えやすい点も考慮されるべきだ。高次脳機能障がい者の社会復帰支援や遺族支援制度の充実も急務であり、今回の返還はその基盤整備に資する措置である。