高市政権の決断――自賠責保険「5741億円返還」は本当に実現するのか? 30年放置の負債、保険料軽減どうなる
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自賠責保険特別会計から一般会計に流用された5741億円の一括返還が2025年度補正予算で検討される。約30年にわたり滞留した資金の返還は、交通事故被害者支援の充実と制度安定化、将来的な保険料抑制につながる可能性がある。
財政難と政策の長期化

改めて問題の構造を整理する。1994年度と1995年度、政府は深刻な財政難を理由に、自賠責特別会計から一般会計へ合計約1.1兆円を繰り入れた。この政策には当時、賛否があった。
経済は常に変動するものであり、改善することもあれば悪化が続くこともある。政策当初は数年で返済する予定であり、当時の政治家も可能だと考えて推進した。しかし経済の悪化が長期化し、2004(平成16)年度から2017年度までの間、返済はほぼ行われなかった。この政策は
・保険料負担の不透明化
・交通事故被害者支援事業の財源ひっ迫
を招いた。制度運営上のリスクを指摘した政治家の意見は十分に反映されなかった。そして現在、残高の返済が検討されているのである。
自民党は2025年度補正予算での一括返還方針を示している。政府や政党から公式な説明はあるが、ユーザー負担への直接的なメリットは前回の返還と同様、限定的との見方が強い。
専門家の意見も分かれる。経済学者や財政学者には、制度改善や財源安定化の効果は限定的との冷静な評価が多い。返還は直接的な返金や保険料の値下げではなく、個々の契約者に現金として戻るものではない。返還資金は自賠責保険の特別会計に戻され、交通事故被害者の救済や制度の安定化に使われるべきとの指摘が交通政策の研究者からも出ている。
一方で、特別会計の財政状況が改善することで、交通事故被害者への支援体制が盤石になるとの見方もある。制度の財政基盤が強化されれば、将来的な保険料値上げのリスクを抑えやすくなる。財政が安定すれば、最終的に保険料の引き下げにつながる可能性もあるのだ。