BYDがヤナセと提携！ 販売店26年設立、「老舗ブランド毀損リスク」はあるのか？ ディーラーの未来図を考える

信頼性とコスト競争力の融合

　ヤナセとBYDの協業は、人口減少時代の縮小市場における新たな生存戦略であると同時に、自動車販売構造のデジタル転換に挑む産業構造的な挑戦でもある。成功のポイントは、ヤナセが築いてきた信頼性とBYDのコスト競争力を組み合わせ、日本特有のアフターサービスへの不安や中古車市場の構造的課題をどこまで克服できるかにかかっているだろう。

　一方で、老舗ディーラーとしてのブランド価値や既存顧客の信頼を毀損するリスクは依然として存在する。急拡大するディーラー網では、EV整備や法務説明の品質に地域差や断絶が生じる可能性があり、オンライン販売との権益調整やチャネル間の矛盾も課題となる。また、消費者の購買行動は依然として対面重視であり、オンライン化には時間を要することも考慮すべきだろう。

　こうしたリスクを踏まえつつ、ヤナセはEV販売とアフターサービスのノウハウを蓄積し、デジタルシフトやデータ活用による新しい顧客接点を構築することで、従来の製造中心型の競争軸から、顧客接点とデータを重視した競争軸へとシフトできるかもしれない。この両面を可視化し、段階的に成果を示すことが、消費者の意識転換や市場の信頼確保につながるだろう。

　結果として、協業は販売権益の再分配やEV市場の競争環境の変化を促す起爆剤となる可能性を持つが、同時にブランド維持やサービス品質の課題を慎重に管理する必要がある。中長期的かつ俯瞰的な視点で、協業の成果と市場影響を見極めることが求められる。