BYDがヤナセと提携! 販売店26年設立、「老舗ブランド毀損リスク」はあるのか? ディーラーの未来図を考える

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老舗ディーラー・ヤナセが中国EV大手BYDと提携。国内EV普及率1.35%の普通車市場で、信頼性と低コストを融合し、新たな販売・アフター戦略の構築に挑む。

筆者の意見

ヤナセのウェブサイト(画像:ヤナセ)
ヤナセのウェブサイト(画像:ヤナセ)

 筆者(北條慶太、交通経済ライター)は、今回のBYDとヤナセの協業を前向きに評価する。特に、ディーラーの

・デジタルシフト
・データオリエンティッド経営(経営判断をデータに基づき行う手法)

の可能性を通じ、日本の消費者への成果還元が期待できる点を重視している。

 ヤナセのBYDを通じたEV市場参入は、事実上のテストケースともいえる。販売とアフターサービスのノウハウを先に獲得することで、他のEVブランドへの展開や事業拡大の基盤を整えられる。結果として、

「EVブランド間の横断的な相乗効果」

を見込め、消費者に幅広い選択肢を提供できる。これにより、国内EV市場での競合優位性を確保し、環境負荷の低減に貢献する企業としての社会的価値も高まる。

 EV業界全体の課題であった消費者との接点も、デジタル活用によって拡大可能だ。幅広い顧客層の獲得につなげられる。J・D・パワージャパンが2022年7月に実施した20~69歳の2800人を対象とした自動車購入意向アンケートでは、EVを選択したいと考える人は25%だった。一方、国内のEV普及率は2024年の新規登録台数で、

・普通乗用車市場:1.35%
・軽自動車市場:2.2%

にとどまる。世界全体でEV普及率が2割に達しようとしている状況と比べると大きく遅れている。この低普及の背景に、EVに関する

・接点の少なさ
・イニシャルコスト(購入時の費用)に関する情報不足
・ランニングコスト(維持費や運用費)に関する情報不足
・故障率に関する情報不足
・メンテナンスに関する情報不足

があると考えられる。したがって、EV専門ディーラーの存在と拡大は、国内市場の成長と世界市場での競争力確保に不可欠である。

 BYD車のディーラー事業を担う新会社は「ヤナセEVスクエア」である。BYDはEVのオンライン販売が話題になっている。ディーラーのランニングコストを抑えることが重要な局面であり、ディーラーのデジタルシフトは急務である。今回の提携はその契機となりうる。

 EVの販売コスト構造を根本から変えることも可能だ。BYDのEVは車種にもよるが、日本勢同クラスの8~9割のイニシャルコストである。ディーラーのデジタルシフトにより、イニシャルコストとランニングコストを並行して低減することができる。BYDとの取り組みで、「買いやすいEV」の市場創出が現実味を帯びる。

 今回の協業はBYDにもメリットがある。ヤナセが長年培ってきた信頼性を活用できるためだ。中国メーカーであるBYDにとって、110年の歴史を持つヤナセとの提携は、

・日本国内の販売チャネル獲得
・販売網の安定化

につながる。日本市場で最も重視される「信頼性」の高い正規ディーラー網を速やかに構築できることは大きな魅力である。

 さらに市場の均衡点を変える可能性もある。BYDはアフターサービスの不安を解消し、ECとディーラーの運営を多角化することで、

「日本メーカーが持つディーラー依存の優位性」

を相対化し、価格競争を加速させる可能性がある。結果として、BYDとヤナセの連携チームが国内市場で優位な地位を確立することも見込まれる。

 さらに、データ競争でも優位性を獲得できる。BYDはEC出店を通じ、顧客データを直接取得し活用できるため、従来の製造中心型から、顧客接点の構築とデータ掌握を重視する競争軸へと移行可能だ。EV市場において、データオリエンティッド型のマーケティングで先行する戦略も現実味を帯びている。

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