BYDがヤナセと提携! 販売店26年設立、「老舗ブランド毀損リスク」はあるのか? ディーラーの未来図を考える

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老舗ディーラー・ヤナセが中国EV大手BYDと提携。国内EV普及率1.35%の普通車市場で、信頼性と低コストを融合し、新たな販売・アフター戦略の構築に挑む。

筆者への反対意見

BYDのロゴマーク(画像:BYD JAPAN)
BYDのロゴマーク(画像:BYD JAPAN)

 今回の協業には、否定的な見解も存在する。特に、ヤナセは老舗として長年培ってきたブランド価値が大きく、それを毀損する懸念がある。既存顧客の信頼が低下することへの不安も指摘される。

 国内では「高級輸入車のヤナセ」というイメージが定着している。新興のBYDとのイメージ乖離により、

「既存顧客が混乱し、離反する可能性」

もあるだろう。特に高級輸入車の顧客は、ブランドに対する心理的期待が強いため、価格や販売チャネルの変化に敏感である。既存顧客の逸走は、ヤナセ全体の経営基盤の低下につながるリスクがある。ブランド低下は、持続可能なビジネスモデルにも直結する課題である。

 急拡大する正規ディーラー網では、EV整備や法務説明などの品質に地域差や断絶が生じるリスクもある。デジタルシフトで補える部分はあるが、特に地方や小規模店舗では人的サポートの不足が消費者の不満につながりやすい。情報格差やサービス体験の差異は、ブランド全体への信頼低下を招く可能性がある。

 さらに、BYDにはECと正規ディーラーの並行運営にともなう権益調整や、顧客への一貫した価値提供の難しさも指摘されるだろう。特に価格やサービス条件の差異が生じると、消費者が混乱し、チャネル戦略上の矛盾が顕在化する恐れがある。

 国内市場特有の構造的課題も根深い。EV普及率の低さ、充電インフラ整備の遅れ、中古車価格の低迷などは、ヤナセ単独の参入だけでは容易に打破できない。さらに、日本の消費者は実店舗での対面相談を重視する傾向が強く、自動車購入のオンライン化は時間を要する可能性がある。デジタルシフトや経営改善が必ずしも思うように進まないとの指摘も根強い。

 以上のように、協業のメリットは大きい一方で、

・ブランド感情
・サービス品質
・チャネル運営
・消費者行動

の不確実性といったリスクも存在する。これらを踏まえ、中長期的な視点で協業の成果を見極める必要がある。

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