新潟のローカル線、特急廃止で「営業収益9割減」……内部留保80億円で挑む投資戦略とは
北越急行は、特急「はくたか」廃止で営業収益の約9割を失い、現在約80億円の内部留保を切り崩して経営を維持する。鉄道事業の赤字を補う投資事業は年間数千万円規模にとどまり、持続可能性の正念場を迎えている。
現在の投資事業の鉄道事業の強み活用不足

気になったのは、北越急行の投資事業が主に配当を目的とした株式投資に特化している点だ。筆者は投資や株の専門家ではないため推測の域を出ないが、鉄道事業の営業損失をカバーするだけの配当を得るには、ピーク時に130億円あったとされるはくたかで蓄えた内部留保の金額では明らかに不足している。
しかし、第三セクターの性格上、よりハイリスクな株式売買は推奨されるものではない。
もう一点気になるのは、北越急行の投資事業は本業である鉄道事業との関連性やシナジー効果があまり感じられない点である。鉄道事業は
「沿線エリアを中心に多くの外部経済を生む事業」
だ。大手私鉄やJR各社では、不動産や観光などを中心に、その外部経済を事業の多角化で内部化してきた。最初は駅など自社資産を活用したビルや商業施設、ホテル事業から始まり、そこで蓄積された知見や信用はやがて沿線エリアを超えて広がっていく。
北越急行の場合、沿線エリアの外部経済を内部化しようとしても、大手私鉄やJRとは異なり、沿線の不動産や観光事業だけで鉄道事業の営業損失を埋めることは難しい。
極端にいえば、まずは沿線エリアで取り組むにしても、東京の中心に“北越急行ビル”を建設・保有し、これを担保物件として不動産を中心に投資事業を展開する発想もあってよかったのではないか。
東京に本社を置く不動産会社が知名度やブランド力を得るため、和歌山県の小さな私鉄を買収し、赤字でも営業を続ける紀州鉄道の例は、鉄道業界でよく知られた話だ。北越急行が東京の不動産事業に投資する場合は、その逆パターンとなる。しかし、内部留保がまだあるうちは、決して不可能な展開ではない。
今後は、株式の配当だけでなく、鉄道事業の強みを生かした新たな投資事業に期待したいところだ。