数十億円荒稼ぎ? BYDの過剰在庫は「確信犯」か「超合理性」か――オーストラリア環境規制の抜け道? EV市場に波紋
筆者への反対意見

一方で、BYDによる大量輸入はオーストラリアにおけるEV普及を加速させ、消費者の選択肢を広げる効果もある。在庫を積み増すことで納車期間を短縮し、販売機会を逃さない供給体制を整えているとの見方も可能だ。
実際、月販台数2000台前後の市場で1万台規模の在庫を抱えることは、販売現場における柔軟な対応力を示すものである。供給不足による販売機会損失を防ぐ体制を構築することは、消費者にとっても明確な利益となる。
NEVS制度を擁護する立場からは、同制度は環境政策として設計されており、炭素クレジットは排出削減努力への正当な報酬である。販売時点算定に切り替える場合、メーカーには報告義務や検証作業の負担が増え、行政コストの上昇も避けられない。
在庫把握のための追加コストは販売現場に直接の影響を及ぼす可能性がある。したがって、BYDの手法を悪意と断定するのは、
・制度設計上の妥協点
・現実的な運用負担
を無視した議論である。
さらに、中国勢の市場参入による競争効果は無視できない。BYDやジーカーの参入により、テスラ一強だったオーストラリアEV市場に競争原理が働くようになった。価格競争や製品多様化は消費者に還元され、EV導入コストを引き下げる効果がある。こうした市場の健全な発展を促す側面は、筆者(鳥谷定、自動車ジャーナリスト)の炭素クレジットを利用した利益操作という論調だけでは評価されていない。
また、制度の「抜け道」を許したのは政府自身であり、責任を企業に転嫁するのは的外れである。BYDを「悪者」とする議論は、国内メーカーや販売網の整備遅れを外資批判で覆い隠す口実としても用いられかねない。むしろ、制度設計上の課題と運用上の制約を踏まえたうえで、現行のNVES制度は一定の柔軟性を持たせる必要があるという現実的判断として理解すべきである。