「日の丸全固体電池」最後の砦? トヨタ×住友鉱山が挑む“素材”からの産業改革――EV覇権を左右する脱皮戦略とは

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トヨタと住友鉱は2025年10月、EV向け全固体電池の正極材量産で提携した。2027~2028年の実用化を目指し、巨額投資と国内サプライチェーン再編を伴う協業は、日本の素材・製造産業の競争力を左右する成否のカギとなる。

技術革新と利益分配

素材産業のサプライチェーン(画像:経済産業省)
素材産業のサプライチェーン(画像:経済産業省)

 両社の協業は、日本の産業界が直面する構造的課題を浮き彫りにしている。素材メーカーは従来の下請け型「受託構造」から脱却する動きが遅れ、完成車メーカーが開発リスクを一手に負う構造が続いている。この結果、

「技術革新の成果による利益」

が素材メーカーに十分に行き渡らず、投資余力を欠くという弊害が生じている。素材メーカー自身が積極的に技術リスクを引き受け、事業投資を拡大する体制が整わないことが、日本の素材産業の競争力低下の一因となっている。

 国の支援スキームも完成車主導型に偏重し、素材・部品層への長期的リスクマネーは不足している。技術標準化も進んでおらず、企業ごとの独自仕様が残るため、規格競争とコスト高が同時に進行している。

 欧州では全固体電池の共通規格化が進み、サプライチェーンによる分業化が進展しているのに対し、日本では統一規格が整わず、効率的な分業体制が構築されていない。また、再生可能エネルギーのコスト高が国内製造の電力単価を押し上げ、素材産業の国際競争力を削ぐ要因ともなっている。

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