「日の丸全固体電池」最後の砦? トヨタ×住友鉱山が挑む“素材”からの産業改革――EV覇権を左右する脱皮戦略とは

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トヨタと住友鉱は2025年10月、EV向け全固体電池の正極材量産で提携した。2027~2028年の実用化を目指し、巨額投資と国内サプライチェーン再編を伴う協業は、日本の素材・製造産業の競争力を左右する成否のカギとなる。

トヨタ国産化の挑戦

全固体電池の構造(画像:トヨタ自動車)
全固体電池の構造(画像:トヨタ自動車)

 トヨタが全固体電池開発で重視するのは、リスク分散と国産素材のサプライチェーン再構築である。特に、中国依存による地政学リスクの軽減が最優先課題となる。

 中国勢が手掛けるEV用バッテリーはリン酸鉄リチウム(LFP)を使用するものが主流となりつつある。これに対して、トヨタが高出力系素材を国内で安定的に調達できることは、製造戦略上の大きな強みとなる。半導体や電池と同様に、素材層までの国産回帰を進める戦略は、海外依存を低減させるだけでなく、国内産業全体の競争力強化にも直結する。

 さらに、トヨタは知的財産の共有と生産分担を同時に進める二重レイヤー戦略を打ち出している。セル生産を自社とパートナー企業双方で進めることで、技術の水平展開と量産リスクの分散を両立させる。住友鉱との共同開発により知財やノウハウを共有することで、海外への技術流出を抑制し、国内サプライチェーンの安定化を図ることが可能となる。

 量産実現に向けては、国内に不足している固体電解質量産設備やセル組立設備の確保が最大の焦点となる。科学技術振興機構(JST)の試算では、硫化物系全固体電池の製造コストは従来のバッテリーの4倍から25倍に達する。トヨタが量産効果をどこまで引き出せるかが、開発の成否を左右する決定的局面となる。

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