「日の丸全固体電池」最後の砦? トヨタ×住友鉱山が挑む“素材”からの産業改革――EV覇権を左右する脱皮戦略とは

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トヨタと住友鉱は2025年10月、EV向け全固体電池の正極材量産で提携した。2027~2028年の実用化を目指し、巨額投資と国内サプライチェーン再編を伴う協業は、日本の素材・製造産業の競争力を左右する成否のカギとなる。

住友鉱のシステム転換

協業イメージ(画像:写真AC)
協業イメージ(画像:写真AC)

 住友鉱は旧住友財閥の源流企業である。祖業は銅事業で、1590年(天正18)に京都で泉屋と称し、銅吹きと銅細工を開業したことに始まる。現在はコバルト、ニッケル、マンガンなどの鉱山権益を世界各地に保有し、日本企業として資源量でトップクラスの優位性を持つ。国内で唯一電気ニッケルを供給しており、粉体合成技術と原料調達力に強みがある。高純度粉体の製造技術では、平均粒径や表面処理技術、酸素制御などで他社を凌ぐ競争力を持つ。

 一方、課題も大きい。新設ラインは1基あたり数百億円規模の設備投資を要し、巨額の資本負担が避けられない。さらに、脱炭素政策に伴うニッケル精錬コストの上昇は利益率を圧迫する要因となる。このため、素材を供給する従来型ビジネスモデルのままでは、将来的な収益性や競争力の維持が難しい。

 しかし住友鉱のトヨタとの協業には明確な狙いがある。それは素材提供企業から

「システム供給企業」

への転換である。素材を単体部品として提供するのではなく、機能システムの一部として価値を付与する戦略だ。正極材単体の供給にとどまらず、電池セルの性能保証や開発ノウハウの共有を含む共同開発モデルを追求することで、長期的な収益構造の転換を狙う。

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