「走る時限爆弾」老朽高速道路の真実――なぜ渋滞事故113件でも工事は止められないのか?

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名神・東名開通から半世紀、老朽化が進む高速道路。長野道岡谷区間の更新工事では2024年に113件の事故発生も継続中。渋滞や心理的負担を抱えつつ、耐震・安全性向上を目指す国家インフラ再生の最前線を追う。

高速道路の情報強化策

岡谷ジャンクション(画像:NEXCO中日本)
岡谷ジャンクション(画像:NEXCO中日本)

 高速道路上には、一般道に迂回した場合の通過時間を示す仮設情報板が設置されている。これにより、ドライバーはリアルタイムの交通状況に応じてルートを選択できるようになった。情報提供の充実は、単なる利便性向上にとどまらず、事故や渋滞による不安感の軽減にもつながる。

 別ルートの走行は渋滞や事故を回避する手段のひとつであるが、構造的には高速道路の老朽化や車線規制の増加にともなうリスクを分散する役割も果たしている。交通量が集中する時間帯でも、適切な情報があれば、ドライバーは心理的な焦燥感を減らし、落ち着いて運転に集中できる。

 高速道路の交通容量は限界に近づいており、大規模なリニューアル工事では従来より長時間の規制が避けられない。そのため、ルート選択や迂回による時間調整は、単なる利便性の問題ではなく、事故防止やネットワーク全体の効率維持という実務的意味を持つ。

 しかし、最も重要なのはドライバー自身の意識である。工事による事故の多くは、車線規制による渋滞区間での前方不注意や追突に起因している。つまり、構造的制約が生む物理的リスクと、運転者の注意力が相互に影響して事故が発生する。こうした区間では、一層の慎重な運転が不可欠である。

 さらに、工事による車線規制で苛立ちを覚えるドライバーも少なくない。しかし、こうした状況下で適切な情報を得られることは心理的負担の軽減につながり、安全意識の維持にも役立つ。長期的視点では、規制や渋滞は単なる不便ではなく、橋梁やトンネルの耐震性能向上、予防保全による事故抑制といった社会的インフラの安全保証につながる要素であり、情報提供はその安全ネットワークを支える重要な手段である。

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