「走る時限爆弾」老朽高速道路の真実――なぜ渋滞事故113件でも工事は止められないのか?

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名神・東名開通から半世紀、老朽化が進む高速道路。長野道岡谷区間の更新工事では2024年に113件の事故発生も継続中。渋滞や心理的負担を抱えつつ、耐震・安全性向上を目指す国家インフラ再生の最前線を追う。

岡谷高架橋の耐震強化

建築直後に撮影された岡谷高架橋(画像:NEXCO中日本)
建築直後に撮影された岡谷高架橋(画像:NEXCO中日本)

 岡谷JCTは中央自動車道から長野自動車道に分岐する地点にあり、地上から高く離れた橋の上に位置している。

 NEXCO中日本によれば、この橋は「岡谷高架橋」と呼ばれ、1986(昭和61)年に開通したプレストレスコンクリート橋である。天竜川、JR中央線、県道を跨ぎ、市街地を地上約55メートルの高さで横断しており、橋の下を行き交う列車や道路の交通、川の流れを常に目にするドライバーや住民にとっても、存在感が際立つ構造物である。建設当時、同形式の橋としては日本最長の橋長を誇り、世界でも2番目の長さであった。当時の最新技術の集大成といえる橋である。

 しかし、建設から約40年が経過し、過酷な使用環境下での経年劣化や、当時の技術水準に由来する維持管理上の課題が顕在化した。長期的な振動や気温差、降雪・凍結の影響を受け続けてきた橋桁や支柱には、目に見えない疲労が蓄積している。このまま放置すれば、ドライバーが日常的に感じる「揺れや振動の不安」が現実の危険に直結しかねない。

 そのため、「高速道路リニューアルプロジェクト」の一環として、長期間にわたり高速道路を安全・快適に利用するための改良と、新設橋と同水準の耐震性能向上のための補強が必要となっている。NEXCO中日本によれば、岡谷高架橋改良工事は、高速道路橋に求められる安全性、使用性、復旧性、耐久性の四つの性能を最新基準まで向上させ、強靭な橋へと生まれ変わらせることを目的としている。建設当時以上の性能を現代の最新技術で実現することを目指しているという。

 具体的には、橋桁の長期にわたる安全性を確保し、走行中の揺れや振動を抑えてドライバーに安心感をもたらす工事、通行の快適性を高める舗装や構造補強、大規模地震時の安全性と復旧性を強化する補強、さらに材料劣化を抑制し第三者被害を防ぐ予防保全型の工事が順次行われる予定である。こうした取り組みは、橋そのものの存在感や威容だけでなく、日々の通行者が無意識に感じる「安心感」を維持するための不可欠な作業でもある。

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