「走る時限爆弾」老朽高速道路の真実――なぜ渋滞事故113件でも工事は止められないのか?
老朽道路の安全維持策

高速道路リニューアルプロジェクトは、さまざまな課題に対応し、構造物を最新技術で補修・補強する取り組みである。建築当初と同等、あるいはそれ以上の性能や機能を回復することで、高速道路を長期にわたり健全に保つことを目的としている。高速道路をより安全に利用し続けるためには、こうした工事は不可避である。
NEXCO中日本によれば、2024年3月時点で供用から30年以上経過した高速道路は約60%に達しており、さらに50年以上経過した高速道路は約30%を占める。2034年には50年以上経過した道路の割合が約50%を超える見込みである。これは、日常的に通行するドライバーにとって、目に見えないリスクが確実に積み重なっていることを意味する。舗装のわずかなひび割れや橋梁の微細な変形も、長期的には走行安全性に影響を及ぼす可能性がある。
そのため、工事中に事故が発生しても、中止するわけにはいかない。老朽道路の安全を維持する取り組みは、単なる工事ではなく、ドライバーが日常的に感じる「安心して走れる道」を守る社会的責務である。
とはいえ、工事による事故や渋滞のリスクにも注意が必要である。岡谷JCT周辺の工事は今後も続く見込みで、渋滞や事故の発生も十分に想定される。こうした状況では、ドライバーの心理的負担も無視できない。実際に、前方不注意や追突などの事故は、車線規制や渋滞で生じる苛立ちが一因となる場合もある。
NEXCO中日本は、こうした渋滞に関する注意喚起をTVCMで行い、ウェブサイトではリニューアル工事の最新情報や渋滞情報を随時提供している。さらに、迂回によってポイントが得られる「渋滞回避サンクスキャンペーン」や、一般道を迂回して再度高速道路に流入した場合でも通行料金が高くならないよう調整する「一般道迂回にともなう通行料金調整」といった施策も行われている。これらは、単なる利便性向上策ではなく、心理的負担の軽減や安全運転を促す工夫であり、老朽道路の安全維持を支える重要な取り組みである。