「モペット」はなぜネットで蛇蝎のごとく嫌われるのか? 無免許・ノーヘル657件が暴く自転車風バイクの制度ギャップ

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2025年1~8月、東京都内でモペットの違反件数は657件に達した。自転車風の外観で無免許運転が横行するこの小型EVは、制度の空白と市場の安価流通が招いた社会的リスクとして、都市交通政策の課題を浮き彫りにしている。

都市交通改革の新層

モペットのイメージ。生成AIで作成。
モペットのイメージ。生成AIで作成。

 問題の本質は、見た目と法区分の乖離と、販売時の責任放棄にある。まず、販売段階で免許確認を義務化する必要がある。自動車販売と同様に、EC取引でも免許証のアップロードと自動照合を必須とすべきである。罰則も設けなければ、実効性は確保できない。

 次に車体デザインの規制が求められる。自転車と誤認させる外観を禁止し、ライトやナンバープレートホルダー、保安部品を標準装備とする。欧州連合(EU)のE-Bike規格を参考に、ペダルアシスト上限25kmで統一基準を定めることが望ましい。

 都市部では限定走行制度の導入も有効である。欧州の低速EVシェアバイクのように、個人所有型ではなく事業者管理型のシェアリングを導入すれば、安全教育や車両点検を確実に行える。

 情報周知の徹底も欠かせない。違反摘発件数や事故データを公表し、免許不要と誤解されないよう広報を強化する。特に若年層には動画教材やSNS広告が効果的である。

 モペットを全面的に排除することは現実的ではない。都市交通の課題は短距離移動の効率化と脱炭素である。欧州では速度制御付きペダルEVが公共交通の補完として普及し、CO2削減にも貢献している。

 日本でも25km上限・免許不要の新カテゴリーを設け、安全基準を満たした車両のみを流通させれば、宅配や通勤、観光などで需要を取り込める。現在の原付と同一視するモデルは失敗の温床だが、制度を再設計すれば、都市交通を支える新しいレイヤーとして昇華させる可能性がある。

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