なぜ「移動するレストラン」に人は熱狂するのか? JR九州「ななつ星」から「レストランバス」まで広がる新市場とは
列車やバスでの食体験が、地域観光と地場産業を活性化している。JR九州「ななつ星」の数十倍競争率や、レストランバスの1万~2万円コースなど、移動と食を組み合わせた新たな経済圏の広がりに注目が集まる。
酒と食の列車旅

酒好きには、酒をコンセプトにしたレストラン列車もある。「越乃Shu*Kura」は、地元の発泡性日本酒、大吟醸酒、オリジナル大吟醸酒のほか、地元食材にこだわったおつまみを盛り合わせたボックスを提供する。地酒王国・新潟の地酒の利き酒コーナーも設置している。「北信濃ワインバレー列車」では、ワインカウンターで地元ワイナリーの厳選ワインを飲み比べできる。ワインに相性のよい「のんびりべんとう」も用意される。
レストラン列車の所要時間は2~3時間、料金は1万~2万円である。地域の地場産業振興を理念に掲げ、沿線の食材をふんだんに盛り込むことが特徴だ。地元のシェフや料理人を起用し、地域の味を楽しめる食事に仕立てている。車内で提供されるのはフレンチやイタリアン、和食のコースだけでなく、お弁当形式のものも多い。地元産ドリンクとのペアリングが試せるコースもある。
過去にも食事や酒を提供する観光列車は存在した。しかし、渓谷や紅葉などの景勝地を楽しむことが主目的であった。レストラン列車は食に重点を置く傾向が強く、景観の派手さがない路線でも実施可能である。むしろ、食材の産地となるのどかな田畑や里山、海岸線の景色を眺めながら食事することに、特別な趣があるといえる。