EVは「中古価格がヤバい」なんて、いつまで言ってるの? 「初代リーフ幻想」を超えた市場の最新進化とは
EV中古市場の現実と課題*

自動車論壇やネット上では「電気自動車(EV)は中古価格が下がる」といった定説が繰り返される。初期のリーフやi-MiEVが投げ売りされた事例が根拠として挙げられるが、一面的な議論に過ぎない。
実際の中古EV市場では、価格の動向はもっと複雑で、多くの要素が絡み合っている。本稿では、最新のEV中古価格の動向を検証し、市場を活性化させる具体策を探る。
EV中古価値の実像

2010年代前半に登場した初代日産・リーフの新車価格は約400万円だった。現在の中古市場では20万円以下で流通するケースもあり、残価率(購入価格に対して、一定期間経過後の中古価格がどの程度残っているかを示す割合)は極めて低い。
一方、国産EV全体の流通量は少なく、比較的高額だった輸入EVとの違いも顕著である。テスラ・モデルSの初期モデル(2014年式)は新車価格が1250万~1550万円と高級車並みだった。現在の中古流通価格は200万~400万円で、残価率は20~30%程度にとどまる。モデルSと同時期に発売されたメルセデス・ベンツSクラス(ガソリン車)は新車価格1000万円超だったが、中古価格はモデルSとほぼ同水準の200万~400万円で推移している。
この事例からもわかるように、リセールバリューはガソリン車とEVを問わず、耐用年数の経過とともに同程度まで低下する傾向がある。単純に「EVだから中古価格が下がる」と断定するのは正確ではなく、耐用年数や車種ごとの市場特性を踏まえる必要がある。
さらに補足すると、初期EVの価格下落にはバッテリー性能の劣化への懸念も影響している。バッテリー交換費用の高さや航続距離の不安定性が、中古価格に反映されやすい。この点を踏まえると、EVの中古市場は技術進化や耐久性改善に応じて評価が変わる可能性があることも理解できる。