EVは「中古価格がヤバい」なんて、いつまで言ってるの? 「初代リーフ幻想」を超えた市場の最新進化とは
中古EVは「安い」という先入観が根強いが、初代リーフの残価率は数%、テスラ・モデルSでも20~30%にとどまる。バッテリー寿命や制度改革が進む今、EV価値の再定義が国内市場の成否を左右する。
技術進化と価値再定義

EV関連技術は近年、大きな進歩を遂げている。
三元系正極材(NMC)バッテリーのサイクル寿命は延び、初期モデルに比べて耐久性が大幅に向上した。中国で主流となりつつあるリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーは低コストで劣化が少なく、残価の維持にも有利に働く。さらにソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)の導入によって、走行データに基づいたソフト更新が可能となり、購入後も航続距離や走行効率を改善できるようになった。結果として、従来の時間とともに性能が下がる車から
「時間とともに進化する車」
への転換が進み、EVに新たな価値が生まれている。しかし、市場と制度には構造的な課題が残る。中古EVの評価基準は一定の進展を見せるものの、多様化する需要に追随できていない。
バッテリー劣化の診断システムは標準化されておらず、バッテリー情報を共有する仕組みも十分とはいえない。残価保証制度も未整備で、リースや残価設定ローンではEVが高リスクと判断され、実態と乖離した低い残価が設定される傾向が強い。
政策面も問題で、新車購入に偏った補助金制度は中古EV市場の活性化に寄与せず、制度の硬直性が市場の歪みを助長している。中古EV市場の健全な発展には、技術革新だけでなく、評価基準や制度設計の改善も不可欠である。