国際物流事業は好調も 日立が「日立物流」を売却するワケ

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日立物流の売却方針が注目を集めている。同社の社会構造の変化を見据えた組織再編の方針が背景にあると筆者。IT事業を核とした企業への転換が目指されているという。

製造業からIT事業への転換

HTSK社の概要(画像:日立物流)
HTSK社の概要(画像:日立物流)

 日立物流を売却に踏み切った背景にあるのは、2009(平成21)年3月期に過去最大の赤字に陥って以降進められてきた事業の入れ替えだ。

 この再編のなかで

・2020年:日立化成
・2021年:日立金属

が売却されている。

 両社は2013年に日立金属と合併した日立電線とともに

「日立御三家」

と呼ばれてきたグループの代表企業だ。製造業の根幹ともいえる化学部門と金属部門を売却したことは、同社が抜本的な再編に乗り出したことの象徴といえるだろう。いわば、製造業からの脱却だ。

 現在の日立製作所が目指すのは、IT事業を核とした企業への転換だ。ここ数年の状況を見ると、2019年に米JRオートメーションテクノロジーズを、2020年にはスイス重電大手ABB社を、2021年には米グローバルロジックを、フランス・タレス社の鉄道信号事業を買収している。

 とりわけ、2021年のグローバルロジック買収では総額95億ドル(約1兆円)を投入している。グローバルロジックはシリコンバレーに本社を置き従業員数2万人を数える企業で、ソフトウエアのデザインや研究開発の顧客企業を世界規模で抱えている。

 同社とABB社、タレス社の鉄道信号事業の買収から見えてくるのは、社会を支えるためのインフラと、それを管理するデジタル技術を主要にしていこうとする状況だ。