なぜ「GT-R」は消滅したのか? 開発困難を超えた日本スポーツカー市場の「構造的病理」
SUV・ミニバン全盛時代

スポーツカー市場、特にGT-Rとの競合はどうなっているのか。生産終了の例としては、三菱「ランサーエボリューション」(2015年)、SUBARU「WRX STI」(2020年)、ホンダ「NSX」(2022年)がある。
ランエボの場合、燃費志向の高まりが生産中止に影響した。2013(平成25)年の販売台数は3500台と低迷していた。ここ10年ほど、燃費や環境配慮への意識が高まり、従来型スポーツカーへの関心は薄れた。一方で、トヨタ「GR86」やマツダ「ロードスター」は、軽量・低価格戦略で生き残っている。
プレミアム路線では、世界的に知名度の高いポルシェ911をはじめ、フェラーリやランボルギーニが規制対応と高価格化を両立させて生き残っている。世界的にはふたつの生き残り戦略が見えるが、日産は両戦略の中間で立ち往生している印象がある。
国内新車市場を見ると、SUVとミニバンが約5割を占める。2021年には登録乗用車販売台数に占めるSUVの割合が初めて30%を超え、30.4%に達した。販売台数は65万1093台で、過去5年間で1.7倍に拡大した。その後も売れ行きは堅調だ。SUVはデザインやコンセプトが多様化し、EV、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)など多様なパワートレインが選べるようになった。コンパクトSUVのラインナップ拡充も幅広い層の需要を牽引している。
ミニバンも高い実用性と居住性から根強い人気を誇る。パワートレインの多様化も進んでいる。ファミリー層や営業用途でもSUVとミニバンは人気だ。最近の子育て世代は使い勝手を重視する。ミニバンやSUV、3列シートの車が好まれ、スタイルや走りよりも現実的な実用性が重視される。スーパーの駐車場の様子からも、この傾向は明らかである。
一方、国内登録乗用車に占めるスポーツカーの比率は2%未満にとどまる。若年層の所得停滞により、高額スポーツカーの購入層は縮小している。少子化に加え、10代・20代の運転免許保有者数は過去2年間で約655万人減少した。購入者の間では、初期費用だけでなく維持費への懸念も強まり、実用性と燃費を優先する傾向が強まっている。趣味性の高い車の市場は縮小している。カッコいい車でデートをしたいという消費行動は、今や経済情勢が許さない状況だ。