率直に言う 自動車好きは「ナルシスト」である

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戦後日本の大衆心理を分析した北原惇氏は、自動車をナルシシズムを満たす商品と位置づけた。EVや自動運転の普及で、自己愛の象徴は利便性重視の社会資源へと変容する可能性がある。

先進国日本の心理構造

北原惇『幼児化する日本人: 戦後日本の大衆心理』(画像:リベルタ出版)
北原惇『幼児化する日本人: 戦後日本の大衆心理』(画像:リベルタ出版)

 北原惇氏の『幼児化する日本人: 戦後日本の大衆心理』(リベルタ出版、2005年10月)は、戦後日本の大衆心理を分析した刺激的な一冊である。マッカーサーは日本人を「12歳の少年」と評したが、その後の先進国入りを経ても、日本がどれほど成熟したかは疑問が残る。北原氏はスウェーデン在住の社会心理学者(2005年時点)として、以下の概念を軸に、大衆心理の変化を丁寧に追いながら戦後日本の社会や文化のあり方を描いた。

・同一視:敗戦や社会変動にともないい、他者や象徴に自己を重ねる心理。攻撃者や権威者、あるいは文化的対象への同一視を通じて、自我の安定を図る傾向。

・操作動機:社会環境や物理的対象を自分の意志で操作したい欲求。制度や他者に対する操作・コントロール志向が、大衆心理において顕著になる。

 同書籍は二部構成で、第1部では戦後日本の大衆心理を分析する。敗戦の影響や攻撃者との同一視、文化的表現、さらに高度経済成長期における先進国としての日本の誕生を扱う。第2部では、先進国に共通する心理傾向としての「幼児化」を論じ、自己中心的な人間像や操作志向の人間像、さらに先進国大衆文化の特徴を考察する。

 北原氏は1961年にモンタナ大学を卒業し、人類学と社会学を学んだ。1968年にはウプサラ大学修士課程(社会学専攻)を修了し、1971年に同大学博士課程(社会心理学専攻)を終え、哲学博士号を取得した。その後、ミシガン大学やサンフランシスコ大学、ニューヨーク州立大学などで教職と研究に従事し、1997年までスウェーデン・イェーテボリ市のノーデンフェルト研究所を主宰した。

 社会学は人間を個人としてではなく、社会全体との関係のなかで理解する学問である。法律や制度、経済、教育、家族、文化、政治などの社会構造が個人に与える影響を分析し、社会現象の規則性を明らかにすることを重視する。北原氏はこの社会学の視点から、先進国社会における自由、平等、民主主義の価値観と現実との矛盾が人々に与える心理的影響を丁寧に分析した。その結果として現れるナルシシズム的傾向や心理的幼児化の現象を、制度や社会構造との関連で理解する枠組みを提示している。

 一方で社会心理学は、個人の心理が社会的環境や他者との関わりのなかでどのように形成され、変化するかを研究する学問である。個人の認知や感情、態度、行動を社会的文脈で理解し、他者や集団の影響が心理に与える効果を分析する。北原氏は社会心理学の視点を用い、自由や平等、民主主義という価値観と現実の制約との矛盾が個人に心理的苦痛をもたらすことを明らかにした。さらに、ナルシシズムの形成や心理的幼児化、操作動機の発現といった具体的な心理メカニズムも解明した。

 つまり北原氏の研究では、社会学の視点で制度や社会構造から現代人の行動や心理傾向を分析し、社会心理学の視点で個人心理や行動動機を理解する二重のアプローチが採られている。この統合的な分析により、ナルシシズム人間がなぜ生まれるのか、現代社会にどのように適応し、同時に心理的矛盾や苦痛を感じるのかを、制度的・心理的の両面から明らかにすることが可能になっている。

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