「月900円」で鉄道・バス乗り放題! 台湾政府が「激安定期券」に巨額投資する根本理由

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台湾政府が2023年に導入した共通定期券「TPASS」。人口1000万都市圏を含む10地域で鉄道・バス・船・自転車まで乗り放題、月最安約900円。渋滞と大気汚染を抱えるバイク天国の公共交通利用を5%押し上げ、沿線経済にも影響を与え始めている。

TPASSで交通一体化

MRT台北メトロ環状線の改札口に掲出された「TPASS」の広告。台湾・新北市新荘区(画像:若杉優貴)
MRT台北メトロ環状線の改札口に掲出された「TPASS」の広告。台湾・新北市新荘区(画像:若杉優貴)

 公共交通の定期券を使ったことはあるだろうか。定期券は日本だけでなく、多くの国に類似の制度がある。台湾にもいくつかの定期券が存在する。しかし、台湾で2023年から発売された政府主導の新型定期券「TPASS・行政院通勤月票」(TPASS)は、一般的な定期券とは少し異なる仕組みだ。

 TPASSは2023年7月、台湾政府の行政院主導で導入された共通定期券である。最大の特徴は、有効期間30日間で指定エリア内のほぼ全ての公共交通が乗り放題になる点だ。

 TPASSの前身は、2018年に開始された「1280月票」である。台北市周辺エリアのMRT(地下鉄)や路線バス、シェアサイクル(時間制限あり)が月1280元(当時4500円程度)で乗り放題になるサービスだ。同年、南部の高雄エリアでも「MeN・Go」という乗り放題サービスが開始されている。

 TPASSはこれらの好評を受け、政府主導で台湾鉄路(台湾の在来線、2024年から国営台湾鉄路公司が運営)も参加し、台湾各地に制度を拡大した。

 例えば、北部エリア向け「基北北桃 生活圏TPASS」は、人口約1000万人の台北都市圏4市(基隆市・台北市・新北市・桃園市)全域を対象にしている。対象には台湾鉄路、台北・新北・桃園捷運、軽軌、路線バス、多くの高速バス、短距離航路、シェアサイクル(時間制限あり)が含まれ、30日間全て乗り放題だ。

 価格は月1200元(約5,800円)と、日本の定期券と比べても非常に安い。販売箇所も

・鉄道駅
・バスターミナル
・地方政府庁舎
・コンビニエンスストア

など多岐にわたる。台湾国民以外の留学生や観光客でも購入しやすく、日本人の中長期滞在者にも活用可能だ。

 なお「TPASS」の名称は、台湾(Taiwan)、交通運輸(Transport)に加え、共好(Together)、行遊(Tour)、信頼(Trust)などの理念から着想を得たものとされている。

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