30年で半減! なぜガソリンスタンドは「セルフ化」しても廃業し続けるのか?

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全国のガソリンスタンドは2024年度末に2万7009店とピーク時の半分以下に減少した。セルフ化や複合化、EV・水素インフラ導入が進む一方、地方では供給網の脆弱化が深刻化。地域経済や物流、雇用に波及するモビリティ再編の現実が浮き彫りとなった。

規制負担で広がる格差

セルフスタンド(画像:写真AC)
セルフスタンド(画像:写真AC)

 燃費性能の向上は顕著だ。

 1990年代に比べ、乗用車の平均燃費は大幅に改善され、同じ距離を走るのに必要なガソリン量は減少した。加えて

・ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の普及
・若年層の車保有率低下
・人口減少

などが重なり、販売量そのものが縮小している。これが示すのは、ガソリンスタンド業界が店舗過多の問題にとどまらず、

「モビリティ市場全体の規模が恒常的に縮小している点」

である。

 KINTOの「2025年版 Z世代のクルマに対する意識比較調査」によると、都内在住のZ世代(18~25歳)では29.1%が「とても感じる」、43.7%が「やや感じる」と回答し、地方在住では18.7%が「とても感じる」、28.0%が「やや感じる」と答えた。都内・地方とも前年から大幅に増加しており、若者のクルマ離れが急速に進行していることが浮き彫りとなった。背景にはクルマの購入価格や維持費の高さに加え、最近の物価上昇やガソリン代高騰などの経済的要因があると推察される。

 ガソリンスタンドも従来型の延命策では根本的な解決にならず、消費者行動や車両構成の変化を見据えた戦略的経営が不可欠となる。

 消防法改正により、地下タンクの防食二重構造化が義務化された(2011年)。更新には数千万円単位の費用がかかる。期限を迎えた時点で閉鎖を選ぶ事業者も相次いだ。セルフ化への投資と地下タンク更新費用が重なることで、撤退が合理的判断となるケースが多い。モビリティ経済の視点では、規制対応コストは事業者間の格差を拡大させ、地域ごとの燃料供給網の安定性に直結する重要要素である。

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