「買わないけど試乗したい」はNG? ディーラーへの不満がネットで大炎上、日本の試乗文化と営業現場の摩擦を考える
試乗文化の国際比較

現在の営業評価制度は、成約率や販売台数に偏っている。顧客との関係づくりや試乗体験の質の向上は、十分に評価されていない。これに対して、顧客満足度やリピート率、SNS上の評判といった「数値で表しにくい評価」を取り入れ、顧客体験を重視した多面的な評価基準を導入する必要がある。
例えば、重要業績評価指標(KPI)に顧客の意見を数値化して加え、成約に至らなくても丁寧な対応やよい口コミを作ることを評価する仕組みが効果的だ。こうした改革は、営業現場の短期的な成果を重視する文化や経営陣の意識の変化が障害となるため、まずは一部の店舗で試験的に実施し、インセンティブの設計を段階的に見直すことが求められる。
日本の自動車販売では、試乗は主に購入を決める
「最終段階」
として位置づけられている。営業側もその前提で準備を進めるのが一般的だ。これに対し、欧米などの市場では試乗体験が購入を検討し始める「初期段階」の顧客接点として広く使われている。購入の意志がはっきりしていない層にも積極的に体験を提供している。この文化の違いが、MT車のように運転技術が必要な車種で、初心者の試乗希望と営業の合理的対応の間に摩擦を生みやすくしている。
この試乗文化の違いは、習慣の違いにとどまらず、社会や文化の背景にも深く根ざしている。日本では車が「完成された製品」として安心して買う対象とされる。一方、欧米では試乗を通じた
「体験による納得」
が購買プロセスの重要な部分だ。特にMT車に関しては、欧米の運転文化の違いや車の社会的な意味の違いも影響している。欧米では車が趣味や自己表現の手段としての位置づけが強く、初心者に対しても試乗機会を積極的に提供している。このような背景を理解しないまま、日本の営業合理性を優先すると、摩擦が起きやすくなる。