船の「丸い先端」が消えた!?――いったいなぜ? 低速運航が変えた大型船の常識とは

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「燃費10%削減」とも言われた船首の丸い突起――バルバスバウ。かつて大型船の標準装備だったこの構造が、今や次々と姿を消している。背景にあるのは、脱炭素化と低速運航という時代の潮流だ。海運の象徴は、技術革新の波にどう抗えるのか。

球状船首の誕生秘話

 バルバスバウ(Bulbous Bow)は、船の船首の水面下に取り付けられた球状または楕円状の突起である。「球状船首」や「船首バルブ」とも呼ばれる。船体下部から突き出したこの構造は、航行中の水の流れを制御し、一定の速度を超えると水の抵抗を大きく低減する効果を持つ。

 起源は古代ギリシアのガレー船に装備された衝角にさかのぼる。当時は造波抵抗の低減ではなく、敵艦への体当たり攻撃が目的だった。現在のバルバスバウは、1911年に米国の造船学者D.W.テイラーが発明した。

 日本では1960年代に乾教授が理論的な設計法を開発。関西汽船の「くれない丸」に装着し、同型の姉妹船と並走させてその効果を実証した。「くれない丸」はのちに「ロイヤル・ウイング」として横浜港のレストラン船に転用されたが、2023年に営業を終了した。

 その後、バルバスバウは大型客船やタンカー、バルクキャリアなどに標準装備されるようになり、大型貨物船の象徴的な構造として定着していった。

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