「メーカーの努力不足」「魅力がないだけ」 アメ車への感情的反発が全く意味ない理由
- キーワード :
- 自動車
日本市場でアメ車が売れない背景には、単なる「大きさ」や「燃費の悪さ」以上に、税制の不公平や金融制度の未整備といった制度的な障壁がある。2023~2024年の輸入車市場ではアメ車のシェアが低迷し、消費者の関心もわずか6%にとどまる。欧州車が日本仕様を整え、広範なサービス網で信頼を築く一方、アメ車は適応や支援体制の遅れから選択肢にすら入りにくい。真の課題は「売れない」ではなく「選ばれにくい」市場構造にあり、制度改革と多様な支払い手段の導入が急務である。
制度と支援が決める市場価値

欧州車、特にドイツ車は日本市場向けに右ハンドルや小型エンジンのラインナップを用意し、日本の保安基準や車検制度に対応した仕様を整備している。一方、アメ車は仕様の柔軟な調整が難しく、左ハンドルのまま販売されることが多く、車検対応にも時間とコストがかかっている。
また、欧州車は全国にディーラー網や整備工場を広げており、故障時にも迅速に対応できる体制を築いている。対してアメ車は部品の調達に数週間から場合によっては数か月かかることもあり、壊れたら乗れない車という不信感を払拭できていない。
つまり、欧州車は日本市場に適応し、信頼を積み重ねてきたのに対し、アメ車は制度的にも構造的にも十分な“参加権”を得られていない状態が続いている。
「アメ車には魅力がない」
「そもそも買いたくない」
という主張は、実際には選べる環境にある人の意見である。しかし現実には、選びたくても選べない構造が存在している。
この問題を解決するには、まず車両仕様の現地適合が不可欠だ。サイズや右ハンドル、排気量の見直しが必要で、ジープやシボレーの一部車種はすでにこれを先行導入している。次に金融制度の見直しも求められる。低金利ローンや残価設定型、サブスクリプションといった多様な支払い方法の導入が重要であり、ジープの月額定額リースは一定の成果を挙げている。さらにアフターサポートの国内拡充も欠かせない。部品の備蓄や修理網を欧州車と同水準に引き上げる必要がある。アメ車が日本市場で再び存在感を示すには、単に車を作るだけでは不十分だ。
「選ばれるための前提」
を制度と流通の両面で整備することが求められている。