「エンジン音 = 時代遅れ」は間違い? ステランティスが6000時間かけた「音作り」の最前線

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EV時代にあっても、6000時間かけて設計された擬似排気音や調査で浮かび上がった“音を愛する若者たち”。エンジン音は今やノイズではなく、自己表現とブランド体験の鍵となる「感性のインフラ」へと進化している。

ソフトが拓く自動車価値

スポーツカーのエンジン(画像:写真AC)
スポーツカーのエンジン(画像:写真AC)

 エンジン音は、かつては出力の副産物として受け止められてきた。しかしEV時代を迎え、体験価値という新たな文脈で存在感を増している。音はもはや副次的なものではなく、個人の嗜好やブランド体験を左右する要素となった。

 前述のナイルが実施した調査によれば、若年層が「理想の車に乗れていない」理由の64.2%は

「経済的な制約」

によるものだった。この数字からも、本当は好みのエンジン音がする車に乗りたいが、手が出ないと考える層の存在が推察される。この背景には、車両価格の上昇や維持費の高さがある。だが、

・擬似エンジンサウンドの搭載
・月額課金型のカーリース

など、新たな提供形態がそれらの壁を下げつつある。こうした手段を組み合わせれば、個人の嗜好に沿った音響体験のカスタマイズが、より現実的な選択肢となる。

 特にEV市場では、発進音の擬似再現技術やスピーカーの多層配置が進化している。これにより、エンジンサウンドは単なる車両差別化要素を超え、ユーザーのライフスタイルや感性を反映するメディアへと変貌しつつある。

 こうした流れのなかで、自動車メーカーは車両というハードウェアを提供するだけでなく、ソフトウェアによる体験価値の継続的改善に力を注いでいる。これには、精緻なアルゴリズム設計やサウンドモジュールの進化といった、技術基盤の強化が不可欠となる。

 内燃機関車で慣れ親しまれてきた自然音とは異なり、EVでは人工的な音の設計が求められる。その結果、「音の質」や「調整可能な音響環境」といったソフト面が、自動車デザインの中で戦略的な要素へと台頭してきた。

 今後、ソフトウェアによる音響演出の自由度がさらに高まれば、自動車は再び“感性”を刺激する存在として若年層の興味を引き戻す可能性がある。自己表現の道具としての価値を再定義し、「車離れ」に歯止めをかける一助になるかもしれない。

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