「エンジン音 = 時代遅れ」は間違い? ステランティスが6000時間かけた「音作り」の最前線
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自動車メーカーの音演出競争

近年、自動車の電動化が急速に進み、エンジンサウンドは過去のものになると思われがちだ。しかし実際には、それに逆行するような動きも出てきている。
欧州ステランティス傘下のアバルトは、「アバルト500e」に伝統の排気音を再現する装置を搭載した。この擬似エンジンサウンドは、約6000時間をかけて開発されたものだ。録音・解析を経て、車両下部のスピーカーから人工音を出力する。加減速に応じて周波数や音量を細かく調整し、ドライバーの没入感を高める狙いがある。
BMWも同様の方向性を示している。映画音楽の巨匠ハンス・ジマー氏と共同開発した「Iconic Sounds Electric」は、i4やiXなどの電動モデルに採用された。スポーツモードでは力強く、エコモードでは静けさを際立たせる可変サウンドを用意し、運転体験の質を高めている。
もともとEVには、歩行者への注意喚起を目的とした車両接近通報装置の装備が義務づけられている。しかし最近では、ドライバー向けに情緒的な音を車内で演出するケースも増えている。モーター自体が非常に静かなため、人工音であっても存在感を持たせやすいという特性がある。
こうした環境のなかで、各自動車メーカーはスピーカーとデジタル信号処理(DSP)を活用し、自社らしさを音でも表現しようとしている。車両のブランド価値を音で差別化するフェーズに入ったともいえる。
この動きは、音楽産業で進化してきたリミックス文化との親和性も高い。
・過給器の笛のような高音
・V型エンジンの重低音
・未来的な電子音
など、さまざまなサウンドが組み合わされるようになっている。最近では、ドライバー自身が複数のサウンドから好みを選択できる機能も増えてきた。EV時代の“エンジン音”は、より自由でパーソナライズされた体験へと進化している。