ステランティス「4000億円赤字」「FCV撤退」という衝撃――欧州水素戦略の見直しを迫る構造的課題とは
水素の現実が、ついに剥がれた。世界第5位の自動車グループ、ステランティスがFCV事業から撤退。4000億円超の赤字を背景に、水素インフラの遅れや市場との乖離が浮き彫りに。今、グローバル企業は水素活用の「再定義」を迫られている。
FCV構想の転換点

ステランティスは7月16日、FCV事業からの撤退を正式に発表した。2025年中に予定していた商用FCVの発売計画も併せて中止した。撤退の主な理由として、同社は
・水素充填インフラの整備不足
・高額な資本投資の必要性
を挙げた。加えて、FCVの市場定着には政府による購入インセンティブの拡充が不可欠であるという判断も影響した。
ステランティスはこれまで、仏ミシュランおよび同国自動車部品大手フォルビアと共同で、燃料電池開発企業シンビオに出資してきた。同社はシンビオの株式を33.3%保有しており、今後の対応についてはパートナー企業と代替策を協議中としている。
今回の撤退は、単なる個社の判断にとどまらず、欧州が推進してきた水素社会構想にも影響を及ぼす可能性がある。水素エコシステムの実現に向けた前提条件が揺らぎ始めている。
ステランティスが撤退に踏み切った最大の要因は、水素ステーションの整備が想定より大幅に遅れている点にある。欧州全体での稼働ステーション数は2024年末時点でわずか294か所にとどまり、その約6割がドイツとフランスに集中している。
一方、電気自動車(EV)向け公共充電ポイントはすでに100万か所を突破し、水素インフラとの格差は年々拡大している。同社は
「2020年代末までに水素を動力とした小型商用車の普及拡大は見込めない」
と明言している。事業計画とインフラ整備スピードとの乖離が、もはや無視できないレベルに達したという認識である。
FCVは、インフラという前提が整って初めて成立するビジネスモデルである。その前提が崩れた以上、撤退は必然といえる。水素モビリティの実現に向けた道筋は、改めて抜本的な見直しを迫られている。