「ハイブリッド回帰」は一時の逃避か? 本当に備えるべきは“エネルギー多様化”と“地政学リスク”への耐性だ
ZEV規制撤回の波紋が広がる米国。最大7500ドルの税控除終了でBEV市場が揺らぐなか、日本メーカーはHV戦略への回帰と電動化投資の見直しを迫られている。政権交代リスク、インフラ遅延、国際競争力低下――政策依存の限界が今、問われている。
全米40%揺るがすZEV撤回

トランプ政権は、カリフォルニア州のゼロエミッション車(ZEV)規制の撤回に動いている。米連邦議会下院は2025年5月1日、同州のZEV販売義務を無効化する共同決議案を可決した。
ZEVとは、
・バッテリー式電気自動車(BEV)
・プラグインハイブリッド車(PHV)
・燃料電池車(FCV)
の3種類を指す。カリフォルニア州は従来、「Advanced Clean Cars II(ACC II)」規制の下、2035年までに新車販売の100%をZEVに切り替える方針を掲げてきた。
この方針には、ニューヨーク州など11州とワシントンD.C.も追随している。これらの地域での販売台数は、全米市場の約4割を占める。ゆえに、カリフォルニアの規制は全米の自動車市場に大きな影響を及ぼす。
今回の決議に賛成した議員らは、ZEV義務化が「消費者の選択肢を制限し、イノベーションを阻害する」と主張している。また「ZEVは市場のニーズと乖離しており、国民が自分に合った車を自由に選ぶ権利がある」との声も多い。
実際、インフラ整備の遅れも懸念材料だ。給電設備や水素ステーションの整備が不十分であり、ZEVに対応する整備人材の確保も追いついていない。こうした現実的な障壁が、「ZEVは非現実的」という判断を後押ししている。
この決定により、北米産のBEVに対する最大7500ドルの税額控除も終了する。ZEVの成長が鈍る一方で、ハイブリッド車(HV)の需要が伸びる可能性が高い。
日本の自動車メーカーにも影響は及ぶ。ZEVとHVの並行戦略が求められ、各社は対応を迫られている。ホンダはBEV販売比率の目標を30%から20%に下方修正した。トヨタも北米市場での電動化方針を再検討する方針を示している。